閉山中の富士山で今季も遭難が相次いでいることについて、山梨県富士吉田市の堀内茂市長が「趣味や道楽で登り、遭難した時にはスマホ1本で助けを呼ぶが、助けに行く側は命がけだ」などと強く非難した。冬季の富士登山については、静岡側の首長からも対策を求める声が上がっており、山梨・静岡両県では、救助の有料化などについて議論を重ねているが、一向に進展していないようだ。(涌井統矢、菅原智)
静岡側も要望書
山梨県側の登山道「吉田ルート」では、4月にスキー目的で入山した米国籍の男女2人がけがを負う山岳遭難が発生。その3日後にも同登山道でオランダ国籍の投資マネジャーの男性が滑落し、右足首を骨折。いずれも富士吉田署山岳救助隊らに救助された。
今月13日の定例記者会見で、堀内市長は、市や県が再三、冬季閉山中の登山自粛を呼びかけてきたことに触れ、「警告を無視して登るということは本当に残念」と嘆いた。
また「富士山は4000メートル級の山で、熟知している方でも危険な厳しい環境」と述べ、安易な登山の抑制のため、「(冬山への)規制を厳しくしていただき、救助にかかった費用は自己負担というかたちでやっていただきたい」と規制強化や救助の有料化を改めて訴えた。
一方、静岡県側でも遭難が多発しており、富士宮市の須藤秀忠市長が8日、静岡県庁で鈴木知事に富士山閉山期間中の規制強化を求める要望書を提出。「(市職員である)救助隊員の二次遭難のリスクも看過できない水準に達している」として、県道である登山道の物理的な封鎖などを求めた。
富士山以外の山の選定、有料化の時期課題
閉山期の遭難を巡っては、昨年4月、静岡県側で中国人の男子大学生が数日間で2度救助される事案があり、麓の自治体首長らから救助有料化を求める声が続出した。
その後、山梨、静岡両県では県防災ヘリでの救助有料化について検討を進めているが、課題は山積しており、時間を要しているのが現状だ。
例えば、原則無償で行われる県警や消防のヘリによる救助との兼ね合いに加え、富士山以外にも対象とすべき山の選定、救助を有料とする時期などが主な課題で、山梨県では、昨年以降、静岡県側とも定期的に意見交換を行い、対応を検討している。
実際に冬山で遭難した登山者の事例などを収集しつつ、既に有料化を導入した「先行事例」である埼玉県を視察し、有料化の経緯や効果、手数料の考え方などについても調査を進めているという。
検討を進める山梨県消防保安課の浅川豪課長は「関係法令も多岐に及び、場合によっては法令改正などを国に求めることも必要になってくるかもしれない」とした上で、「無謀な登山をどう防止するかが重要で、ヘリの有料化はその対策の一つにすぎない。あらゆる手段を考えていく必要がある」と話している。