クマに襲われ木の棒で命拾いした男性、開発した「クマ撃退用ポール」に注文殺到…青森県警も導入

クマに襲われた経験を生かして開発された「撃退用ポール(棒)」が注目を集めている。距離を保ち身の安全を確保できるとして、岩手県岩泉町の佐藤誠志さん(59)が昨春に販売を開始して以降、県内外で800本以上売れ、クマ出没が相次ぐ青森県警も導入。佐藤さんは「クマと会ってしまった時に致命傷を防ぐことができれば」と話す。(山岸憲伸)
「棒がなければ顔を攻撃されていた」
佐藤さんは2023年9月、同町の早坂高原近くの山林でキノコ採りをしている最中、生い茂った草木の先で何かが動くのに気づいた。木の上に登る子グマと、体を左右に揺する母グマの姿が見えた。「絶対にやられる」。覚悟した直後、母グマがものすごい勢いで突進してきた。
つえ代わりにしていた長さ約1メートル60の木の棒で、何度も襲いかかってくるクマを繰り返したたいた。しかし途中で棒をつかまれ、振り上げたところで足元まで接近されると、肘や太ももをかまれたり引っかかれたりした。程なくしてクマは立ち去った。
佐藤さんの体には今も傷痕が残るが、「棒がなければ、(致命傷になりかねない)顔を攻撃されていただろう」と、クマと対峙(たいじ)した際に距離を保つことの重要性を学んだ。
全7種類でカスタム可能
九死に一生を得た経験から昨年の春前に撃退用のポールを製作した。ポールにはアルミ合金などを使用し、先端が二股に分かれた全7種類。長さは1メートル15~70を用意し、カスタムもできる。クマの素早い動きに対応できるよう最も軽いポールで約500グラムと軽量化を図った。実現に向けて、猟友会員からもアドバイスをもらったという。
パンフレットに記したポールの使い方には、〈1〉振り上げた時に距離を詰められないよう、たたかずに突くこと〈2〉クマにつかまれないように、突いた後はすぐに引くこと――など自らの教訓を生かした。
ふるさと納税の返礼品にも
元々山菜やキノコ類、ペット用品などをインターネットで販売しており、昨春からポールも商品に加えたところ、注文が殺到。これまで累計で800本以上が売れ、今月中には1000本に達する見込みという。
山の近くに住む家族への贈り物として購入する個人客や、仕事で山に入らざるを得ない電力会社、測量会社からも注文を受けたという。ポールは近隣の農家らの手作りで、今年から町のふるさと納税の返礼品にもなっている。
佐藤さんは、山に入る時のクマ対策として「ブザーや笛を携帯し、まずはクマと出会わない工夫が大切」としつつ、「遭遇した場合の想定や道具の準備もしてほしい」と備えの大切さも訴える。
商品価格は7800円~2万7000円(税込み、送料別)。佐藤さんが運営する店舗「原生林の熊工房」のECサイトから購入できる。