【特区民泊】新規の受付は停止も『新法民泊』が“抜け穴”に?『年間営業日数180日以内』は守られるのか…大阪市は「適切に監視・指導していく」

全国の9割以上が大阪市に集中する「特区民泊」
全国の9割以上が大阪市に集中している「特区民泊」。
国が指定した特定の地域で通常より緩和された営業要件で民泊を運営できる制度ですが、大阪市は29日に新規受け付け停止しました。背景にあるのが、民泊を利用する外国人観光客らによるゴミ・騒音などの問題です。
一方で専門家は、特区民泊の新規受付を停止しても別の種類の民泊へ移行するだけだと指摘します。
今回の新規停止で大阪の街はどう変わるのか?地域住民や民泊事業者、そして、大阪の観光やまちづくりに詳しい阪南大学・松村嘉久教授らを取材しました。
今月末で新規受け付け停止…1日に約50件の“駆け込み申請”
5月8日、大阪・中央区にある「特区民泊」の申請窓口では、大勢の人が順番を待っていました。
去年10月、大阪市は「特区民泊」の新規受け付けを今月29日で停止すると決定。すると申請は増加し、今年3月の新規申請数は去年の約1.5倍に。現在、1日に約50件もの“駆け込み申請”が起きているといいます。
(新規申請に訪れた事業者)

「申請の期間が終わりそうで早めに来た」

「もう申請ができなくなるので。(特区民泊は)収益性も良い」
「民泊反対」市民ら反発…『ゴミ・騒音問題』が背景に
大阪市が新規受け付け停止を決めた大きな理由は、民泊を利用する外国人観光客らによるゴミや騒音などの問題。2025年度には市に対し723件もの苦情が寄せられたといいます。
こうした中、市民の中で強まっているのが民泊への反発です。大阪・阿倍野区では「民泊反対」と書かれた黄色い“のぼり”がずらりと立っていました。
周辺住民らによると、去年11月にこの地域に建つ一軒家について「特区民泊にするための説明会を開く」とする文書が届いたといいます。
しかし、住民らが強く反対の意思を示したところ、計画は中止になったということです。
(住民)

「今まで既存の施設(民泊)の問題が多い。そういうことを真似されたら困る」

「騒音とか、治安が悪くなるかなという心配もあった。子どももいるので。(計画が)無くなったというのは安心しました」
外国人観光客「ホテルよりも民泊」「日本文化の体験妨げる」
一方、「特区民泊」の新規申請が停止することについて外国人観光客は…
(外国人観光客)

「Bad. 多くの人はホテルよりもエアビーアンドビーで民泊を予約することを好みます。安いからです」

「No good. 新規停止は人々が日本文化を体験することを妨げます」
大阪市「ホテルが増えているため、ただちに影響ない」
もともと特区民泊は増加するインバウンドを受け入れるために導入されました。しかし、大阪市はこの間にホテルが増えており、新規申請を停止してもただちに影響はないとしています。
また、大阪観光局も…
(大阪観光局 溝畑宏理事長)「これを機に宿泊施設の質が上がっていく。むしろ、そっちの方になっていけば、民泊であろうとホテルであろうと、客を満足させることが最大のミッション。(停止は)私の評価としては、あまり影響は無い」
中国人の民泊事業者 土地購入・建物建設も「計画は白紙に」
そんな中、今回大きな影響を受けるのが民泊を営む事業者です。
大阪・西成区で不動産業を営む中国人の林伝竜さん。外国人の客を中心に土地や建物を売買するほか、自身も3棟の建物で民泊を経営しています。
しかし、今月29日をもって特区民泊の新規受け付けが停止されることで大きな影響が出ていると言います。
(不動産業「盛龍」林伝竜社長)「13階の建物で民泊にする予定だった。(停止は)もちろんショック。うち損するから。(計画は)今はもう止まっている。将来は分からない」
特区民泊をつくるために西成区の土地を購入しましたが、計画は全くの白紙に。さらに、特区民泊にするために去年9月から建設を始めた建物もありましたが、その翌月に停止が決定。申請には完成した建物が必要ですが、今月29日には間に合いません。
(不動産業「盛龍」林伝竜社長)「(Q住宅にする?)住宅かもしれない。まだ分からない。ちょっと辛い」
「今年は売買少ない。今は中国人全然ない」
特区民泊は他の種類の民泊と違い、開業する際の規制が緩和されているほか、年間の営業日数に制限はなく収益性が高いと言います。
林さんはこれらの不動産を民泊にすることは諦め、他の活用方法を考えています。
また、外国人などからの民泊向け不動産の需要も減っていると話します。
(不動産業「盛龍」林伝竜社長)「(Q今の不動産の売り上げは?)今年に入ってから売買少ないです。今は中国人、全然ないですよ」
「安定から下落方向へ」地価に影響する可能性も
不動産のプロは、申請停止によって「地価」にも影響が出る可能性があると指摘します。
(大和不動産鑑定 山内正己不動産鑑定士)「(近年は)特区民泊向けの物件に適していたところが急上昇したという傾向があります。上昇していた地点の地価が今後、安定から下落方向へ行くかなという懸念はあります」
新規停止後『新法民泊』が“抜け穴”に?
一方で大阪の観光やまちづくりに詳しい専門家は、特区民泊の新規受付を停止しても別の種類の民泊へ移行するだけだと指摘します。
(阪南大学国際学部 松村嘉久教授)「特区民泊をやめて『新法民泊』で申請し直してやるということですね。特区民泊の問題、民泊の問題は全く解決せず、そのままずっと続く」
民泊には「新法民泊」と呼ばれる種類もあります。
特区民泊と違い、年間営業日数が180日以内という制限があり、大阪市は事業者に事業実績の報告を義務付けていますが、これが守られず“抜け道”になる可能性があると話します。
(阪南大学国際学部 松村嘉久教授)「ちゃんと言う人もいると思いますけど、言わない人は言わないですよね。180日の規制を(行政が)どうやってちゃんと見ているのか、すごく疑問です」
これに対し市は「新法民泊」についても適切に監視・指導していくとしています。
「迷惑民泊根絶チーム」特区民泊2817施設を重点監視対象として調査
さらに新たな「迷惑民泊」対策も。
去年11月に発足した市の「迷惑民泊根絶チーム」が、市に寄せられた苦情の分析結果などを踏まえ、特区民泊のうち2817施設を重点監視対象として日々調査していると言います。
(大阪市保健所 迷惑民泊根絶チーム 辻貴士さん)「(今回の立ち入り調査では)使用開始時と終了時に(利用者に)しっかりと本人確認をしているかどうかというところが不十分でしたので『不適』としております。今後しっかりと本人確認をするところを改善するように指導しております」
大阪市・横山市長「応じてくれない事業者に厳しい処分を検討」

横山市長はこうした調査の上で、仮に悪質な事業者がいれば厳しい姿勢で臨むとしています。
(大阪市 横山英幸市長)「重ねての行政指導に応じてくれない事業者に関しては、認定取り消しなどの厳しい行政処分は当然検討していきたいと思います」
特区民泊の申請が停止しただけでは終わらない民泊を巡る問題。今後も注視していく必要があります。
(2026年5月26日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)