千葉県印西市の駅前データセンター(DC)建設計画を巡り、建設地に隣接するマンションに5月下旬、「今売らないと価値がなくなる恐れがある」などの過激な文言で売却を勧める不動産業者のチラシが配布されたことがわかった。マンション管理組合は8日、住民の不安をあおる悪質な内容だとして、東京都内の不動産業者に抗議文書を送った。市議会からも「人権侵害だ」との指摘が出ている。(木村透)
DCの建築確認処分の取り消しを求めた訴訟の原告で、「タウンセンター地区の活用について考える会」の男性(53)によると、チラシは5月25、26、27、29日にマンションのほぼ全戸に配布された。
「DCの建設により、享受してきた眺望や住環境が損なわれようとしている」「完全に景色が遮られてからでは、高値での売却は極めて困難になる」などの文言に続いて、〈1〉最高値・スピード直接買い取り〈2〉荷物そのまま・撤去費用0円――などとうたい、この業者への売却を勧めている。
マンションの敷地とDC建設地の距離はわずか約11メートルで、高さ約51メートルのDCが完成すると、15階建てのマンションより高くなる。住民らは日照権侵害や景観破壊、圧迫感、騒音、振動などの被害を受けるとして反対運動を展開しており、建築確認処分の取り消し訴訟や市への住民監査請求を行っている。
DCの工事は3月に始まっている。チラシ配布は「住民の不安を助長するものだ」として管理組合は直ちに反応。不適切な表現と頻繁な配布に抗議し、配布の意図について説明を求める文書を8日に不動産業者に送った。
文書では、これまでも買い取りや査定を促す広告の配布はあったとする一方、今回のチラシについて「DC建設に対して真摯(しんし)に向き合い、行政や施工業者などと協議を重ねている住民の困惑や精神的重圧につけ込み、不安を過度に増幅させるものだ」と批判。配布回数も異常な頻度とした。
客観的事実に基づかない表現は、景品表示法の不当表示に当たる可能性もあるとして、消費者庁にも報告したという。
男性は「不愉快だ。マンション内部の調和を乱すのが目的なのかと思った」と話している。
この問題は4日の市議会一般質問でも取り上げられた。山田喜代子議員(共産)はDC建設を巡る市の姿勢などの質問に続き、「ひどいことが書いてあるチラシが配られた。人権侵害と言わざるを得ない」と指摘。藤代健吾市長は「業者には、住民の感情に寄り添った対応をしてもらいたい」と答弁した。
不動産業者は昨年6月設立。登記簿によると、不動産の売買や賃貸、コンサルティング業務などを行っている。
不動産業者は取材に対し、「管理組合から連絡があり、チラシの配布はやめた。不安をあおる表現とは思っていなかったが、今考えると適切ではなかったかもしれない」としている。