「今季最強」の台風19号が首都圏を直撃する恐れがある。専門家は、都心部で大雨や高波による浸水被害や、暴風による倒木や飛来物による被害が発生した場合、大規模停電や交通網の寸断など深刻な被害を引き起こすとして、警戒を呼びかけている。
大型で猛烈な台風19号は10日午前6時現在、硫黄島の南南西を時速15キロで北に進んだ。中心気圧は915ヘクトパスカル。
東京都では、中心気圧910ヘクトパスカルで通過した1934年の室戸台風級の勢力を前提とした浸水想定を作成している。その場合、江東区の南砂や江戸川区平井で10メートル程度の浸水となる可能性がある。『水害列島』などの著書があるリバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏は、「東京駅前は50センチ、日比谷も50センチ~3メートルになる。兜町なども2メートルの浸水が想定される」と指摘する。
台風19号は首都圏に到達する12~13日にかけて935~965ヘクトパスカル程度まで衰えると予想されているが、土屋氏は「それでも覚悟が必要だ。はるか遠くで起こした波が東京湾に入ってきた際に台風の目が重なるなどすれば、勢力は衰えても高潮になる恐れがある」と警鐘を鳴らす。
台風15号では、千葉県で送電線の鉄塔が倒壊した。今回も暴風への警戒が必要だ。まちづくり計画研究所所長で防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は「東京の街路樹は老木が多く、風で倒れて道路網が寸断されたり、電線を切ったりする可能性もある」と話す。
東京五輪・パラリンピックを控えて渋谷など都心各地で再開発が進んでいる。「建設現場などの足場や建設資材などの飛来物による被害も懸念される。超高層ビル街では、ビル風に台風の風が加わり、乱気流になって吹き荒れることも考えられる」と渡辺氏。
立命館大学環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏は、「風速40メートルで屋根瓦、60メートルでは屋根そのものが飛び始めるので住宅内にいるのは危険だ。飛来物で窓ガラスが割れた際には、風の行き場がなくなり天井や屋根を飛ばす恐れもあるので、窓をすべて開けた方がいい」と話す。
非常事態への備えが肝心だ。