自民党派閥の政治資金パーティーを巡る不記載事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)罪に問われた元参院議員、大野泰正被告(67)らの判決が23日、東京地裁で言い渡される。東京地検特捜部が国会議員ら計12人を立件した一連の事件で、議員側への判決言い渡しは初めて。派閥解消の引き金になるなど、政界を揺るがせた「政治とカネ」の問題を巡り、裁判官がどのような判断を下すのか注目される。(佐藤侑歩、山本玲)
議員最多の不記載額
「道義的責任はありますが、犯罪を犯してはいません」
濃紺のスーツにストライプのネクタイ姿で出廷した大野被告は、令和7年9月10日の初公判で起訴内容を否認した。
起訴状によると、大野被告は元秘書の岩田佳子被告(62)=同罪で公判中=と共謀し、平成30年~令和4年、自身の政治団体「泰士会」の収支報告書に、旧安倍派(清和政策研究会)からの寄付計約5100万円を記載しなかったとしている。事件に関する自民の調査で、不記載があったとされる80人以上の議員のうち、大野被告の不記載額は最多だった。
自民最大派閥だった旧安倍派は、パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載せず、議員側に還流していたとされる。
一連の事件で立件された12人のうち、6人について公判が請求されたが、このうち旧安倍派の元会計責任者や旧二階派(志帥会)の元会計責任者については、執行猶予付き有罪判決が確定。議員側では大野被告のほかに、同じく旧安倍派から還流を受けたとされる元衆院議員、池田佳隆被告(60)らの公判が残る。
「預かった」と無罪主張、共謀も否認
昨年9月に始まった大野被告の公判で最大の争点となったのが、旧安倍派から還流された販売ノルマ超過分のパーティー券収入について、被告らが政治資金収支報告書に記載が義務づけられる「寄付金」と認識していたかどうかだ。
検察側は、大野被告が遅くとも平成29年にはこの還流の仕組みを認識していたと指摘。還流分を受け取った際、派閥側と返還に関する取り決めはしておらず、事務所や個人名義の口座に入金した上で飲食代などに充てており、「寄付と認識していた」と強調した。その上で、大野被告は元秘書から収支報告書案を提示された際、不記載を虚偽と知りながら修正を指示しておらず、共謀関係が成立するとした。
一方弁護側は、大野被告らが派閥から受け取ったカネについて、寄付ではなく「預かり金」と理解していたと主張。いつでも返却できるよう、口座の残高が常に受領した総額を上回るように管理していたとし、「お金に色はない」などと無罪を訴えた。
「選挙の公約を実現しようと没頭していた。事務に関しては一切関与していない」。祖父、父母も政治家で、地元・岐阜で名門一家の一員として知られる大野被告。法廷では、収支報告書にどのような報告項目があるかも知らず、「処理は秘書に任せていた」と共謀を否定。一方、元秘書の岩田被告は、現金で受け取った還流分は「速やかに大野氏に手渡した」とし、使途は認識していなかったと主張した。
不記載事件、受け止めに影響
検察側は論告で、「国民の政治不信の増大を招いた悪質な犯行」と指摘し、大野被告に罰金150万円、岩田被告に罰金50万円を求刑。一連の事件で略式起訴された政治家や秘書らは、それぞれ罰金100万円などの略式命令が確定しており、この量刑を考慮した求刑となったとみられる。
特捜部による立件から、およそ2年半。本格捜査に先立って問題を注視し、刑事告発していた神戸学院大の上脇博之教授は、「判決まで長く、世間の関心が薄れてきていると感じる」とした上で、「無罪を主張し続けた議員側への判決は非常に重要。言い渡される判決次第で、不記載が指摘されたほかの議員や、事件に対する世間の見方にも影響が出るとみられる」と話している。
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自民党派閥パーティー収入不記載事件 旧安倍派(清和政策研究会)など自民党の複数の派閥が、政治資金パーティーの販売収入のうち、ノルマ超過分を議員に還流しながら支出に記載せず、議員側も還流分を関係政治団体の収支報告書に記していなかったことが発覚。政治資金規正法違反罪に当たるとして、令和6年1月~7年8月、東京地検特捜部が現職・元職の国会議員4人を含む計12人を立件した。問題を受けて、旧安倍派を含む自民党の5派閥が解散した。