海外製天気アプリ相次ぐ誤情報、5月に東京都文京区に「大雪警報」…無許可事業者を規制強化

海外の事業者が国内のスマートフォン向けアプリなどに配信する気象情報で、誤った内容を表示するケースが相次いでいる。気象庁の許可を得ずに天気予報を出している事業者もあるとみられ、同庁は無許可事業者の規制強化に乗り出した。(塚本康平)
「警報発令中 暴風警報、洪水警報、大雨警報」――。今年2月、米大手IT企業が提供するスマホの天気アプリで、兵庫県内に複数の警報が発表されているとの情報が流れた。しかし、警報は気象庁が自治体や事業者向けに試験配信したもので、実際には発表されていなかった。
外部から問い合わせを受けた同庁は、ホームページなどで誤りだと説明。同庁業務課の担当者は「試験用だと伝えていたが、そのまま情報が出てしまった」と振り返る。
この企業の天気アプリでは、2024年5月にも東京都文京区に「大雪警報発令中」と誤った表示をしたことがある。SNSでは「この季節にまさか」「これから大雪が降るの?」などと困惑が広がり、同区がX(旧ツイッター)で打ち消す事態となった。
同社は取材に対し、「回答できない」としている。
気象庁は、各地の観測データを基に将来の大気の状態をスーパーコンピューターで計算する「数値予報」をベースに、地域特性や過去の事例などを踏まえて天気予報を発表している。
1993年の気象業務法改正で、民間事業者も一般向けに予報ができるようになった。民間事業者は気象庁や海外の気象機関のデータのほか、独自の観測網や予測技術を活用。都道府県の北部や南部といった区分で発表される気象庁の予報より地域を細分化し、市町村ごとに出したり、スタジアムや動物園など特定の施設の予報も行ったりして付加価値を出している。
ただし、予報業務を行う事業者は気象業務法に基づき、技術審査を経て同庁長官の許可を得る必要がある。裏付けのない予報が広まると、住民の安全を損なう恐れがあるからで、違反した場合は50万円以下の罰金となる。許可事業者には警報を伝える努力義務も課される。
同庁によると、許可を受けている個人・団体は89あるが、海外事業者はゼロ。無許可で予報業務を行い、スマホアプリやインターネット上で配信していると疑われる海外事業者は少なくとも7社確認されたという。昨年8月に調べたところ、海外事業者が「大雨警報」を表示していなかったり、予想最高気温が実際の気温とかけはなれたりしていたケースがあった。
こうした状況を改善しようと、同庁は気象業務法を改正し、5月29日から規制を強化した。
無許可で予報業務を行い、是正を求めても応じない場合は、同庁長官の判断で会社名やサービス内容を公表できるようにした。疑わしい事例を把握するための通報窓口も設置。海外事業者には、許可申請の際に国内の代表者か代理人の指定を義務づけ、所在がわからなくなった場合は、許可を取り消すことができるようにした。
天気予報や気象データを一般、企業向けに提供するウェザーニューズ(千葉市)や日本気象協会(東京)など国内の許可事業者5社は5月29日、「気象情報の信頼性を担保し、利用者が安心して確かな情報を選択できる環境を構築するための重要な前進」とする共同見解を発表した。
同庁情報利用推進課は「気象情報が正しく伝わらないと、災害による被害も生じかねない。規制を強化し、技術が担保された予報を国内に流通させたい」としている。
飲料、宅配…精度高い予報 企業に不可欠
精度の高い予報や気象データは、企業活動にも欠かせないものとなっている。
日本コカ・コーラは2020年から、ウェザーニューズから熱中症指数の提供を受け、スマホのアプリで、熱中症の危険度が高いと予測される地域のユーザーに注意喚起と飲料の購入を促すキャンペーンを実施。購入すれば、飲料と交換できるスタンプが2倍になる特典もつけた。注意喚起したユーザーの購入率は、しなかったユーザーに比べて約20%高かったという。
同社ベンディング事業部の遠藤充・シニアマネージャー(39)は「天気や温度などの気象データは、我々のセールスにかなり影響を与える要素になっている」と話す。
宅配代行大手「出前館」も、天候や気温の情報を基に、22年夏から配達エリアの天気や気温などを考慮して配達時間を予測し、顧客に伝えている。導入後は配達予定時間と実際にかかった時間の誤差が平均で5分ほど短縮できたという。