《旭川女子高生殺害・懲役27年の判決》「イジメはありますね」元受刑者らが語る、“リコ”を待ち受ける女子刑務所の生活「1人あたり年間300万円、税金の無駄遣い」には専門家が反論

〈《旭川・女子高生殺害》「裁判官、裁判員の皆さま、どうか、あいつに私の娘が望む判決を…」父が涙の訴え…「ふてくされている」と法廷で指摘された“リコ”に懲役27年を求刑〉から続く
2024年に旭川市で女子高校生を橋から転落させ殺害した罪などに問われている内田梨瑚被告(23)の裁判で、旭川地裁は22日、懲役27年の実刑判決を言い渡した。仮に内田被告が控訴することなく刑が確定した場合、「既決囚」として拘置所で過ごすが、その後、分類調査が行なわれ、どこの女子刑務所に収容するかが決まる。女子刑務所は男子刑務所とどう違うのか。またその処遇は? 識者や元受刑者らに聞いた。
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「移送先が決まるのが数週間、数ヶ月かかることもあります」
女子刑務所は北海道から佐賀県まで全国に10ヶ所あるが、なかでも栃木刑務所は施設の老朽化などに伴い2028年4月1日に閉庁される方針だ。
内田被告の身柄は現在まだ拘置所にあるが、刑が確定した場合、いずれこれらのどこかの刑務所に移送される可能性が高い。移送先はどのようにして決まるのか。女子刑務所の現役刑務官に聞いた。
「男性の刑務所は犯罪傾向などによって『A』や『B』など施設が分類されています。しかし女子刑務所は『W』というひとつの分類しかありません。拘置所内で『分類調査』と言われる知能テストや心理テストが行なわれ、各収容施設の受け入れ体制の兼ね合いでどこに移送されるかが決まります。早くて数週間で移送先が決まる時もあれば、数ヶ月かかることもあります」
女子刑務所は『W』というひとつの分類しかないが、犯罪傾向が進んでいる者や累犯は刑務作業を行う工場で分類されることはあるという。
「女子刑務所の刑務作業は『洋裁』が中心で、ミシンを使う工場もあります。その工場を累犯受刑者だけでまとめたりすることはあります。しかし親子や姉妹が同刑務所にいる場合は同じ累犯でも分けないといけませんし、違反行為などをして『懲罰』を科された受刑者と入れ替えるなどメンバー替えもあるので、きっちりと分類されているわけではありません」
刑務作業はこれまで受刑者に義務づけられたものだった。しかし、2025年6月1日に拘禁刑が新設され、受刑者の犯罪傾向や特性などに応じて、刑務作業や更生のための指導を柔軟に組み合わせる矯正処遇の仕組みに変わった。これらは内田被告の刑が確定した場合、どのように影響するのか。立正大学法学部教授で保護司でもある丸山泰弘氏に聞いた。
「内田被告が起こした事件は拘禁刑が新設される前の2024年なので、原則的には拘禁刑ではなく懲役刑による処遇が行われ、懲役刑として刑務作業や改善指導をすることになるはずです。そのなかで、“カッとなってしまった時のアンガーマネジメント”や被害者の視点を取り入れた教育などの処遇が行われる可能性があります」
「共同室に入った新人は看守にバレないように素手でトイレを洗わされます」
内田被告はこれまでの公判で殺意を否認し、被害者遺族の代理として質問に立った弁護士に法廷での態度を「ふてくされている」と指摘されている。そんな彼女が刑務所で心から反省し更生できるのだろうか。
実際に自身が栃木刑務所に2回収容されたことがあり、現在は建設会社を経営し出所者などを積極的に雇っている廣瀬伸恵氏に聞いた。
「私が2回服役した20年以上前の栃木刑務所には、人を殺してバラバラにした女性や姉妹で人を殺した方が入っていました。人をバラバラにした女性は受刑態度もよく、2級(受刑者の自発的な改善への努力を促すために設けられた階級。当時は4級から1級まであり、2級まで昇格するのは難関だという)まで上がっていましたが、運動時間に人を殺した時の様子を『人間の腸ってすごい長いんだよ』と嬉々として話していました。また、覚せい剤で何度も刑務所に入ってた人も『次はあそこに隠せば見つからない』とかそんな話ばっかでした。誰も反省なんかしないんですよ」
廣瀬氏によれば、女子刑務所では「子の虐待と子殺し」の受刑者がいじめの標的になりやすいという。
「誰がどんな罪で入っているかは、個人情報なので本人が言わない限り分かりませんが、噂でだいたい回ります。子供の虐待と子殺しの受刑者は、みんなから無視されたり作業中に足を引っ張られたりとあらゆるいじめの対象になります。
新人はだいたいが共同室(複数人が収容される部屋)に入りますが、トイレ掃除は看守にバレないように素手で洗わされます。“部屋の主”が『手で洗え』って言うんですよ。最近出所してきた子からもその風習を聞きましたよ」
「受刑生活を送る中で、ふとその受刑者の心が動く瞬間を目にすることがあります」
刑務官らの日頃の心がけは「何も起きない起こさせない」ことで「平常を保つ」ことだという。
「受刑者の観察が大きな任務のひとつです。そのため刑務官同士でチームを組み、受刑者らの観察をし、受刑者ひとりひとりの行動をトラブルだけに限らず些細なことでも日々記録します。この記録があるとないとでは大違いで、これによって『何も起きない起こさせない』ための注意や、さらなる監視ができるようになります(前出・刑務官)」
では、廣瀬氏の「刑務所にいる者は誰も反省していない」という言葉を、刑務官はどう受け止めるか。改めて聞いてみた。
「反省していると見せかけて、していない受刑者ももちろんいるでしょう。しかし、そんなのはこちらも見抜いています。私たちは反省せず再犯して刑務所に戻る受刑者を何人も見ています。ここは刑務所ですから、そもそも更生した者の社会復帰した姿を見ることはありません。ただ、一縷の望みはあります」
その一縷の望みとは何か。
「反発的な受刑者も少なからずいます。しかし受刑生活を送る中で、ふとその受刑者の心が動く瞬間を目にすることがあります。小さなことですが『ありがとう』が言えるようになったとか、毎日荒れていた受刑者が少しずつ静かになっていったとか。そして、ここはそのわずかな改善をできるだけ長く保ち、可能な限り改善し続けていくことを目指す場ですから」
6月8日に内田被告に懲役27年の求刑がされた際に、SNSではこのような投稿が話題になった。
〈刑務所の運用コスト 1人当たり年間300万として 内田8100万 小西(優花受刑者)6900万〉
この投稿に「ふざけるな」「税金の無駄遣い」などのコメントが多数ついた。これに対し、丸山教授は言う。
「たしかに刑務所の一人当たりの運用コストは年間約300万円だということが以前に指摘されていました。しかし、時代とともに支出にかかるコストは変化しており、(受刑者の)作業等で収入となるものの相場も変化していると考えられます。
例えば、刑務所では収容にかかるコストだけでなく、作業による収入となるものもいくつか存在します。懲役刑では、1日8時間/週40時間の刑務作業が義務づけられており、その作業による収入は全て国庫に帰属します。
収容者が受け取る作業報奨金は平均4,556円/月(平成7年度)で、執行が始まってすぐの被収容者は更にかなり安価であることが出所後の生活費や被害弁償に充てる資金とするにしても不十分でないかと問題視されています。
ちなみに、刑務作業ではCAPIC(キャピック)製品を制作することや、刑務所の外の企業から依頼があった作業を請け負うこともあります。さらに社会貢献作業などもあるため、一概に収容にかかるコストだけを念頭に置くのは違うのかもしれません。さらに、これらとともに、特別改善指導の1つとして、先述した被害者の視点に立った教育が行われることになります」
判決が下った内田被告は今何を思うのか。自身の罪に向き合い、更生する日は来るのだろうか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班