子宮がない女性に新たな選択肢を 日本初の子宮移植へ 藤田医科大学が臨床研究実施にむけ準備を開始

子宮がない女性の妊娠・出産を可能にする「子宮移植」の実現に向け、愛知県の藤田医科大学病院が日本初となる子宮移植の臨床研究実施を目指してワーキンググループを立ち上げ、準備を本格化させています。
藤田医科大学病院は22日、子宮移植の臨床研究実施に向けたワーキンググループの初会合を開き、厚生労働大臣が認定した法人である学校法人藤田学園が設置した「藤田医科大学臨床研究審査委員会」への申請を見据えて、関係する診療科の代表者が集まり、研究方針や体制整備について協議しました。臨床研究を計画しているのは、藤田医科大学病院の木須伊織医師らのチームです。
子宮移植は、生まれつき子宮がない人や病気などで子宮を失った人に、提供された子宮を移植し、妊娠・出産を目指す医療です。木須医師(当時は慶応大学病院)らは2009年ごろからサルを用いた動物実験を重ね、子宮移植の研究を続け、2012年には世界初となる霊長類における子宮自家移植後の出産を成功させたということです。しかし、日本では生命維持に直接関わらない臓器を移植することへの是非や生体ドナーへの負担など、倫理的・社会的な議論が続いてきました。海外では2014年にスウェーデンで世界初の子宮移植後の出産が実施されていて、これまでに20か国以上で150例以上の子宮移植が行われ、70人以上の子どもが誕生したといいます。一方で、日本ではまだ実施例がありません。
木須医師は、まずは生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性などを主な対象として想定しているということです。ロキタンスキー症候群は、女性の約4500に1人の割合で発症するとされ、毎年の新規患者数は約130人にのぼるといいます。日本にはこうした女性を含めて生まれつき子宮がない人とがんなどで子宮を摘出した人を合わせると、20~30代で子宮がない女性が約6万~7万人ほどいるとの見方を示した上で、将来的には、子宮がんや子宮筋腫などで子宮を失った女性も対象となる可能性があるということです。
子宮移植でのドナー(提供者)について、脳死や心停止している死体ドナーは法改正が必要なため、現時点では認められていません。そのため、母親や姉妹など親族から子宮の提供を受けることが想定されますが、そのドナーが長時間の手術を受ける必要があり、手術に伴う大量出血や他の臓器を傷つける可能性など身体的・精神的な負担が伴います。一方、移植を受ける側であるレシピエントは拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を服用する必要があり、妊娠中の高血圧や早産などのリスクもあります。
子宮移植を希望する患者からは、長年にわたり「早く日本でも実現してほしい」という声が寄せられてきたといいます。木須医師は、ロキタンスキー症候群の患者に対し、「こどもを持たない選択」「養子縁組」「海外での代理出産」に加え、「子宮移植」という4つ目の選択肢について説明しているといいます。その上で、「僕自身は子宮移植を強く勧めるわけではありません。患者さんがどれを選ぶか、その選択肢を広げることが大事なんじゃないかと思っています」と話しています。
日本医学会は2021年、生体ドナーからの子宮移植を少数例に限定した臨床研究として認める報告書を公表しています。
藤田医科大学病院の子宮移植のワーキンググループは安全かつ有効な体制の整備などを経て、国内初となる子宮移植の臨床研究実施を目指すということです。なるべく早い実現に向け、臨床研究審査委員会への審査申請を、今年中に行うことをを目指すということです。17年にわたり子宮移植の研究を続けてきた木須医師は、「もっと早く日本で実現してほしいと言われてきたが、国内の議論に時間がかかった。海外ではすでに20か国以上で実施されており、歯がゆさもある」としながらも、「しっかりとした手順を踏み、着実に進めていきたい」としています。