「髪型がダサい。坊主にしろ」「お前は公務員しか価値がなく、40代のおばさんからしか相手にされない」「俺の目が黒いうちはお前を主任にさせない」――。
【写真を見る】ハラスメントの相談・調査などを担う総務部がある世田谷区役所東棟
東京・世田谷区の元職員Aさんは、2024年春の人事異動で世田谷区のある課に新たな課長が着任して以来、課長からのこうした人格否定とも取れる暴言で苦しむことになる。
パワハラ被害の相談窓口に駆け込むと、あろうことか事実上の「追い返し」や「虚偽説明」など二次被害を受けた。この問題は、後に世田谷区議会本会議でも、議員に追及される事態に発展した。
民間の範となって防止対策に取り組むべき公務職場でなぜ、ハラスメントは繰り返されるのか。Aさんは、「相談対応が被害者に寄り添っていないうえ、調査にも問題が多い」と指摘。「表面化させないことを最優先にしているから、何度でも同じことが起きる」と警鐘を鳴らす。
Aさんが経験した被害の実態と区の対応を以下に記す。
■「加害者にバレてもいいのか」
パワハラ加害者の課長は、冒頭の対面での暴言に加えて、Aさん不在の場でも「あいつは風俗に行きまくっている」と虚偽の悪口を課員らに言い放っていた。課員の中には「あいつはアスペルガーだ」と不在の場で吹聴された職員もいた。
同じ課内ではBさんもこの課長から、役職に見合わない程度の低い仕事ばかりを命じられるパワハラ「過小な要求」によって心に支障をきたしていた。課長の了解を得てAさんとBさんが進めていた業務が納期直前、課長の一存で方針転換された際は、複数の職員がいる前で「AとBが全部悪い」と怒鳴られた。方針転換に伴って残業していたAさんに「今までさぼってきたツケが回ってきたな。自業自得だ」と罵声を浴びせた。
Aさんは25年4月初め、Bさんと共にハラスメント相談の窓口を訪れて担当幹部に被害相談をする。Aさんがパワハラについて一通りの説明を終えると、担当幹部からこう言われた。
「パワハラとして組織的な対応を望むなら、加害者に告発した人がわかってしまう。それでもなお、対応を望まれるのか」。いくつかのやり取りを経て、「あなたからこういう相談があったことを(パワハラ課長を含む)4人の部課長に説明せざるをえない」とも告げられた。
厚労省によるパワハラ防止の指針や世田谷区のハラスメントの防止に関する基本方針では、相談や苦情処理に当たっては、当事者のプライバシー保護は最優先課題となっている。