議長就任時に金を要求されたとする県議の「2000万円カツアゲ」告発で全国的な注目を集める福岡県議会。この金銭授受疑惑で追及の渦中にあるのが蔵内勇夫・県議会議長だ。麻生太郎・自民党副総裁をはじめ、多くの大物国会議員を輩出する福岡にあって”県政のドン”と呼ばれる。その蔵内氏に「新たな疑惑」が浮上した。同氏の地盤である筑後市に整備された巨大な公園をめぐる問題とは――ノンフィクション作家の広野真嗣氏が迫る。(文中敬称略)
* * *
県政の歪みを示すひとつのエピソードを知ったのは、蔵内の城下町、福岡・筑後市で取材を始めて間もなくのことだった。筑後市は有明海にそそぐ矢部川中流に位置する県南部の小さな市である。
住民の1人は、4年前に目の当たりにした珍妙な光景をこう振り返った。
「県営のモニュメントの除幕式でのことです。普通は整備した首長が『おめでとう』と祝福されるものだと思うでしょ。ところがこの時、俺が作ったと言わんばかりに真ん中に歩み出たのは県議の蔵内でした。その蔵内を向いて県知事の服部誠太郎が率先して拍手しているんですから、おかしなもんでしたよ」
除幕式は20年余りをかけ、代々木公園の3.5個分という規模で整備されてきた「筑後広域公園」の中心に、隈研吾作のバネを模したゲートや竜の石籠を設置したことを記念して行なわれた。ゲートの真下に、蔵内が提唱する「ワンヘルス」を称えるプレートが埋め込まれている。
この「ワンヘルス」なる言葉が、獣医師の資格も持つ蔵内の権力構造を読み解くカギのひとつだ。人の健康と新興感染症の原因となる環境や動物の保健衛生を一体的に考える理念だという。
福岡県では学校で教育教材まで配られている重点政策だが、ほぼ福岡でしか通じない言葉でもある。理念だけなら聞き流せるが、巨額の税金を投じるとなれば話は別だ。モニュメントだけで4億円もの金が投じられたばかりか、公園全体の整備費は400億円。川の対岸の町では総事業費200億円のワンヘルスセンターなる箱モノの整備も進められている。
前任知事の退任後、蔵内の推しで後釜に収まった県庁プロパー知事の誕生は、”蔵内人事”と囁かれた。議会と知事が拮抗するどころか、県議に知事が従うという倒錯した主従関係の象徴的な場面が冒頭の拍手なのである。
それから時が経ち、県知事を従え、今や麻生や元総務相の武田良太ら有力国会議員と伍する蔵内だが、その権力に重大な異変が生じている。