熊本地震の偽画像がSNSで拡散 毎日新聞の写真をAIで加工か

熊本地震の被災状況を伝える毎日新聞デジタルの写真を生成AI(人工知能)で加工したとみられる偽画像が、SNSで拡散される被害が出ている。元の画像は倒壊した家の前で厳しい表情を浮かべる被災男性を撮影したものだが、偽画像は男性が笑顔を浮かべてピースサインをしているような姿に改ざんされていた。
毎日新聞は7月29日、熊本県内で被災男性の一人から被災直後の緊迫した状況を聞き、男性が倒壊した自宅の前で厳しい表情を浮かべて立つ写真とともに記事にし、紙面とニュースサイトに掲載した。その後、男性が笑顔を浮かべてピースサインをしているような姿に加工された偽画像がSNSのスレッズに中傷コメントを付けて投稿されたうえ、X(ツイッター)に転載されて拡散していた。
加工された偽画像は倒壊した家屋や雲の配置に至るまで男性以外の写真の構成要素が全て元画像と一致した。投稿を見て被災男性を激しく非難するようなコメントも寄せられたという。男性は「コメントの内容がひどすぎる」と憤り、「私一人の問題ではなく、多くの方が亡くなった熊本を侮辱する行為だ。二度と起きてほしくない」と話している。
毎日新聞社社長室広報ユニットは「画像は毎日新聞デジタルに掲載された写真を改変したものである可能性が極めて高いことを確認しました。こうした改変は当社の著作権を侵害する行為である上、被災者の尊厳を傷つけるものです。極めて遺憾と考えており、法的措置も視野に対応を検討しています」としている。
虚偽画像の拡散、過去の災害でも
生成AIを使って作られた虚偽の画像や動画がSNSで拡散される事例は過去の災害でも相次いでいる。
2022年9月、台風15号で大きな被害を受けた静岡県の様子だとする画像が当時のツイッター上で拡散した。投稿には「ドローンで撮影された静岡県の水害」と書かれ、濁流に沈んだ街の様子を空から見下ろしたような画像が添付されていたが、水の流れが不自然で人物の顔もぼやけており、実際には生成AIで作られた偽画像だった。
日本ファクトチェックセンターの分析によると、25年12月に発生した青森県東方沖地震でもAIを使ったデマ投稿が拡散した。建物が崩落したり地面がひび割れたりする映像や、ニュース風に編集された動画が投稿されたが、生成AIで作成されたことを示す透かし文字や「AI生成メディアを含む」という注釈が入っていた。
その他にも、災害時には過去の災害の映像や画像を使って実際には起きていない被害を投稿する事例も目立つ。総務省などは、実際の被害と異なる偽情報▽根拠のない犯罪情報▽助けを求める偽情報▽募金詐欺▽科学的にあり得ない陰謀論――などが災害時には広まりやすいとして、画像が生成AIで作られたものでないかチェックしたり、投稿内容の情報源や専門家の知見を確認したりするよう呼びかけている。【金森崇之】
上野達弘・早稲田大法学学術院教授(知的財産法)の話
新聞やニュースサイトに掲載されている画像を勝手に使用することは著作権侵害に当たる。さらに今回のケースは、著作物を勝手に改変することを禁じる同一性保持権、被災された方の肖像権も侵害しており、幾重にも違法で正当化する事情も見当たらない。投稿内容は名誉毀損(きそん)に当たり、刑事責任を問われる可能性もある。