7月24日、改正皇室典範が公布された。長年の議論を経た成立だったが、直後の世論調査では異例の結果が示された。
読売新聞の調査(7月24~26日)では、再改正による女性天皇の容認に「賛成」が85%に達し、「反対」の8%を大きく引き離した。共同通信の調査(25~26日)でも賛成81.0%を記録している。
従来も賛成は7割前後存在したが、改正によって女性天皇や「愛子天皇」の可能性が閉ざされた直後、賛同の声がさらに跳ね上がる形となった。全国紙記者は「政府の判断に対し、国民が『NO』を突きつけたに等しい」と語る。
“立法府の総意”と世論の決定的なズレをどう捉えるべきか。成城大学文芸学部教授で元・毎日新聞皇室担当の森暢平氏に検証してもらった。
総合してみると、国民意識の分断が見えてくる
世論調査では、女性天皇を容認する割合は高いのですが、気になる点もあります。例えば、共同通信の調査では女性天皇に「反対」する人が16・1%とそれなりに高い割合で存在します。朝日新聞の調査でも、改正皇室典範で女性は天皇になれないことに「納得できる」と答えた人は29%にも及びます。単純に女性天皇に反対する人が「多い」「増えた」というわけではないことに注意が必要です。
この要因として、議論の深まりとともに、女性/女系天皇を忌避する人たちも、保守層を中心に増えていることがあるでしょう。このことは、旧宮家養子案に対して、内閣支持層と不支持層の賛否が大きく異なることからも裏付けられます。共同通信の調査では、旧宮家養子案に「賛成」は全体では51・3%(反対39・9%)です。
しかし、高市内閣支持層だけに限ると「賛成は」66・1%に跳ね上がり、内閣不支持層に限るとこれは29・7%にとどまります。すなわち、高市内閣を支持する人の中に、旧宮家養子案を強く支持する一方、女性/女系天皇への忌避感を持つ人が一定数いるということです。政治信念から女性/女系天皇に反対する人も増えているのです。各種調査を総合してみると、国民意識の分断が見えてきます。
「皇室」にあえて関心を向けたくはないという意識も
皇室典範議論で国民の皇室問題への関心が高まったという声もあります。しかし、これもそう単純な話ではありません。毎日新聞の調査では、養子の子に皇位継承権を与えることについて賛成26%、反対41%ですが、注目すべきは「わからない」とした人が30%もいることです。無視できない割合です。
日頃ニュースをそれなりにフォローし、女性天皇問題に関心を持つ層は確実にいる。一方で、価値観が分かれる皇室問題には、むしろ目をあえて向けたくないと思っている人がかなりの数存在するのです。
競争社会を生きざるを得ない若い世代は、争い事や論争を避ける傾向が強いといわれています。国会でもめている様子は見たくない、あるいは対立が苦手という人は確実に存在します。そこには、価値観が分かれる「皇室」というテーマに、あえて強い関心を向けたくはないという意識が見え隠れします。それは単なる無関心や不勉強ではありません。
私が、宮内庁の官僚なら、そうした人たちにどのようにアプローチすれば、世代的な共感を広げられるかを考えると思います。残念ながら、今の皇室の広報戦略はそこまで思いが至っていません。国民がもっと皇室に関心を持てば、問題が解決に向かうといった単純な話でもないのです。
森 暢平 成城大学文芸学部教授。元・毎日新聞皇室担当。CNN日本語サイト編集長を経て、現在はジャーナリズム論を専門とし、近代皇室の社会史などを研究。著作には『天皇家の財布』(新潮社)『天皇家の恋愛』(中央公論新社)など
週刊女性2026年8月18日・25日号