《17歳の脱出劇》「アンタ、今、200万で売られたから」 旅行先の“売春島”で売られた少女が海を泳いで逃げるまで、売春宿の女将は「本当のお母さんのような存在だった」

三重県志摩市東部に広がる的矢湾(まとやわん)。入り組んだ海岸線が広がる中に、空から見ると”ハート形”をした島が浮かんでいる。その島の名前は渡鹿野島(わたかのじま)。現在は「恋人の聖地」にも認定されている同島には、長らく続いた仄暗い伝統があった。
人呼んで”売春島”。かつてはパブやスナックを装った”置屋”と呼ばれる売春斡旋所が多数立ち並び、最盛期の1980年前後には100人とも言われる娼婦がいたという。
2017年に刊行されたノンフィクションライター・高木瑞穂氏(Xアカウント:@takagimizuho2)の著書『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』(彩図社、2019年に文庫化)でにわかに脚光を浴び、アングラ界隈の外側へとその名が知られることとなった。2024年からは、高木氏原作のコミック『売春島1981』(大洋図書)も配信されている。
売春島はなぜここまで人々の関心をひくのか。それは、剥き出しにされた人間の”欲”と、この上なく残酷な”搾取の構造”が存在しているからだろう。
メグミもこの島に売り飛ばされた女性の1人だ。1995年8月、メグミはこの島から一人で泳いで逃げた。彼氏に騙され、200万円で売られた末の脱出だった。同書より、その経緯を一部抜粋して紹介する。【全5回の第1回】
旅行先で私は突然”売られた”
「メグミ、今から旅行に行かへんか」
地元(愛知県)の居酒屋でナンパされて付き合った彼氏の武井(仮名)に誘われこの島に来たのは、7月の暑い日だった。三重県志摩市、ワタカノシマ。初めて聞く名前の島だった。
『N』旅館に入り、美味しい料理を食べているさなか、彼は「ちょっと待って」と言い残したきり帰って来ない。20分後、部屋に入ってきた女将さんが言った。
「アンタ、今、200万で売られたから」
わけも分からずその場でへたり込んだ。
助けを呼ぶ手段もない
そう、私は売られた、大好きだった彼氏に騙されて。これから毎日、私はここでカラダを売って200万を返済しないといけないらしい。女将さんは言った。
「ショート2万、ロング4万。ショートは60分。ロングは泊まりで夜11時から朝7時まで。半分はあなたのものだから」
200万返すには、ロング2万を100日。冗談じゃない。
助けを呼ぶにも、島には公衆電話も見当たらない。もちろん携帯電話なんて持ってない。誰かが警察に捜索願いを出さない限り、私はここで売春するしかないのだ。自発的に働きに来ているコは島の外に出られるけど、借金がある私に自由はない。船着き場は、いかにもヤクザ風の男たち2人に見張られていた。