特定技能外国人を虐待か「日本は安全と信じていたのに…」暴言・暴力・セクハラが横行する農業法人から脱出したミャンマー人、専門家「あり得ない」北海道京極町

北海道京極町の農業法人で、特定技能で働くミャンマー人労働者への暴力やセクハラ、暴言が発覚。相次ぐ脱出劇と被害者の悲痛な証言、音声データから、労働現場で横行する深刻な人権侵害の実態に迫ります。 (HBC報道部 熊谷七海、山﨑裕侍)
農場で暴行・虐待・セクハラか…証言や動画で検証
HBCはミャンマー人が保護された直後から取材をしていました。
複数の証言や動画・音声のデータから、その問題を検証します。
札幌地域労組 鈴木一顧問(20日・札幌市) 「おはようございます。朝食べた?」 ミャンマー人女性 「はい!」
暴力や人権侵害を受けたとして、これから抗議に向かうミャンマー人の女性4人です。
女性たちを車に乗せ、運転するのは支援する札幌地域労組だ。
4人は、それぞれ今年5月と7月に特定技能外国人として北海道にやってきた。
札幌地域労組 鈴木一顧問 「車の中から見ている?」
ミャンマー人女性 「はい」
鈴木顧問 「この車で行きましょう」
彼女たちが口々に暴力をふるわれたという、北海道京極町の農業法人に申し入れにいく。
札幌地域労組 鈴木一顧問 「あ、来た来た」
車の中でミャンマー人女性 「キャー」
農業法人で働くミャンマー人が撮影した動画 「来いって!教えてやるから、コラ!」
「日本のご主人様は誰だ」胸倉をつかみ顔をたたく暴行
暴行、虐待、セクハラ、女性たちが訴える被害とは。
HBC熊谷七海記者 「農場で外国人らがブロッコリーを収穫しています」
羊蹄山のふもと、後志地方の京極町に広がるブロッコリー畑。
この農業法人ではミャンマー人など多くの特定技能外国人が働く。
取り仕切っているのは町議会議員でもある60代の父親、40代の長男と次男だ。
農業法人で働くミャンマー人が撮影した動画 「何だその目、何かお前、文句あるのか、言ってみろ、したら」
この動画は、先月中旬、特定技能で働くミャンマー人の同僚がひそかに撮影したもの。大声をあげるのは父親とみられる。
農業法人で働くミャンマー人が撮影した動画 「わからんか、この野郎、ちょっと来い。来いって教えてやっから。コラ!来いって教えてやっから」
突然ミャンマー人の胸倉をつかみ、倉庫の外に引っ張っていていく。実はこの直前には…
農業法人で働くミャンマー人が録音 「アホか(たたく音)」 ミャンマー人 「どうして私の顔をたたいたんですか?」
ミャンマー人が突然、顔をたたかれたという。
「アホなことするからだ」 ミャンマー人 「どうして私の顔をたたくのですか」 「仕事しないからだべ、言ったことも分からん」
鉄の棒で殴打、卑劣なセクハラ…教会に逃げ込んだ女性たちの悲痛
この日、抗議に向かった女性4人は、先月、農業法人から脱出し、現在、札幌のキリスト教会で保護されている。
私たちの取材に対し、口々に被害を訴える。
この女性は、写真のような鉄の棒で突然たたかれたと話す。
被害を訴えるミャンマー人女性Aさん(30) 「後ろから棒で2回たたかれました。人生で一度も手を上げられたことがないし、突然たたかれたので、私は泣きました」
さらに女性は、父親から胸を触られたり、お尻をたたかれたりしたと訴える。
被害を訴えるミャンマー人女性Aさん(30) 「恐怖と恥ずかしい気持ちでいっぱいとなり、一日中ずっと泣いていました」
この女性は、小突かれた際にメガネが壊れたという。ミャンマーから持ってきた大切なメガネが使えなくなった。
日本語の指示がうまく伝わらないと、親子はたびたび怒鳴ったという。
農業法人で働くミャンマー人が録音 「こら!言ってきかないと(ミャンマーに)帰すからな。ちょっと待て。何だお前その態度、出てこい。頭痛い、具合悪い、仕事できない、そんな奴いらねんだ。なぜやらんよ!」
農業法人で働くミャンマー人が録音 「お前たちの雇い主だぞ。お前たち誰に雇われていると思っているのよ。誰から給料もらってんのよ。日本に来て仕事をしたいんだったら、日本のご主人様は誰だ!」
ふらふらになりながら歩く女性。足が痛くなっても働き続けたという。
熱中症で倒れるミャンマー人が出ても、熱中症対策がうまくできていないとして責め立てたという。
農業法人で働くミャンマー人が録音 「どう見てもお前たちが悪い、言うこと聞かないで、途中で倒れるから、カッパ脱げと言っているべ、水も飲めって何回も言ってるべ、だから熱中症になるんだ」
「ミャンマーに帰れ」追い詰められる現場、専門家は「あり得ない」
抗議に向かう前、彼女たちに聞いた。
HBC熊谷七海記者 「言われた言葉でひどかった言葉は?」
ミャンマー人女性 「(全員が口をそろえて)ミャンマーに帰れと言われたことです」
その言葉を録音したデータがある。
農業法人で働くミャンマー人が録音 「みんなまとめてミャンマーに帰してやるから。インドネシア人でもベトナム人でもいるんだから。お前たちの代わりぐらい、すぐにいるんだから」 「在留カードを出せ、お前の在留カード、今こっからすぐ取り消してやるから」
脱出したミャンマー人女性(20) 「私たちはたくさん努力して、時間とお金かけて、日本は安全な国だと信じてきました。それを彼らは、何か気に食わないと『荷物まとめろ、ただちに帰れ』とばかり言う」
暴力やセクハラは言語道断、法令違反の疑いも
農業での外国人労働者の問題に詳しい専門家は、暴力やセクハラは言語道断であり、入管法など多くの点で法令違反の疑いがあると指摘する。
北海学園大学(農業経済学)宮入隆教授 「率直にまずあり得ない。いまの時代、そういう露骨なやり方で外国人を縛りつけて働かすというのは、農業だけじゃなく他の分野でももうなくなっている。そういう中で先祖返りしたみたいな、亡霊が表れているようなイメージですよね。さっきの録音とか聞いてちょっとびっくりしました」
労組による団体交渉…さらに相次ぐ労働者の「脱出」
避難した女性は、札幌地域労組に加入した。
労組は農業法人に対して、暴行や虐待行為の即時停止など団体交渉を開催することを求めた。
そして女性たちが法人に抗議に向かった日、新たに2人のミャンマー人男性が法人から脱出した。
HBC熊谷七海記者 「いま脱出してきて、気持ちどうですか?」
脱出したミャンマー人男性(23) 「残った友だちの心配している」
農業法人は「事実関係を調査中」
世永聖奈キャスター 農業法人はHBCの取材に対して「社内で事実関係を調査中」と答えています。
堀啓知キャスター 北海学園大学の宮入教授は「外国人労働者に対する虐待や暴行は昔は多くあったが、北海道の農業は改善に取り組んできた。こうしたことがあると経済的なデメリットも大きい」とも話しています。つまり北海道のイメージ低下とか、もしくは日本のイメージ低下にもこれ繋がるのかなと思いますが。
コメンテーター寺井裕美子さん 私も先週このニュースを見ていたときに、本当に何か言葉が出ないほど衝撃的なニュースで、一生トラウマになってしまうような、こう胸が痛むニュースだなっていうことを思いました。農業も私のいる観光も本当に北海道は多くの外国人に支えられています。やっぱり日本の社員と同じように一人一人を大切にして、あとはこう相談できるような、組織ですとか、そういう場所が必要になってくるのかと思いました。
コメンテータ鶴岡慎也さん 日本って、外国人労働者がいないと成り立っていかないと思うんですよね。その中でやっぱりこう彼らがどんな思いで母国から来たのかというのを考えて、やっぱりものすごく僕ら同じ日本人としてすごい申し訳なさも感じるぐらいの映像でしたし、迎える側がやっぱり彼らが万が一こういうことになったときに、なんか駆け込めるような場所を作っていくことも義務なのかなとは思いますよね。
堀キャスター 脅すとか、恫喝するとか、暴行、セクハラ、本当に劣悪な環境だったんだなというのが本当伝わってくるわけですけれども、これはこの法人とか、京極町の中で起きたことと狭く捉えるのではなくて、日本社会の問題として考えていかないと、立場の弱い外国人労働者の人権を守ることはできないと思います。