吉松源昭県議の告発に端を発した福岡県議会を巡る問題は、副議長、議長が辞任する事態に発展した。その後も、自民党本部が統一地方選での公認見送りに言及するなど、中央政界をも巻き込み、収束する気配を見せない。
本件で疑惑の中心人物となったのが、“福岡県議会のドン”と呼ばれた藏内勇夫県議会議長だった。世論やマスコミの報道に押される形で県議会議長、そして約40年にわたり務めてきた県議の辞職に追い込まれた藏内氏。今回、渦中の藏内氏が 月刊「文藝春秋」(9月10日発売)の取材 に二度にわたり応じ、議長ポストを巡る金銭授受問題などについて語った。
「議長だけでなく、県会議員も辞めた方がいいと」
――金銭の授受について、一貫して否定してきました。やましいことがないなら、なぜ議員まで辞めるのでしょうか?
「『議長だからこそこの福岡県議会を改革し、進化させなきゃいかん』と思いつつ、僕自身、本当に眠れぬ夜もあった。そんな中、この9月議会で政治倫理条例の制定を目指すスケジュールが了承され、議会改革の道筋がついた。そして、8月17日の臨時議会の採決で若手に苦労をかけた。彼らをはじめいろんな方の意見を聞いて、ここはもう議長だけでなく、県会議員も辞めた方がいいと。私のいない県議会で改革案を進めてもらった方が県民の理解につながると考えました」
「私は、選挙では絶対にお金を使わない」
――吉松氏の告発会見では、現金授受を巡って、中尾正幸副議長(当時)とやりとりした録音データも示されています。証拠のある話では?
「第三者委員会による調査を待つ身ですので、ここで具体的な話をすることは控えます。ただ、私は基本的に、議会の正副議長選挙に際して、金銭のやりとりをするのはダメだという考え方。もちろん政治ですから、お互いに懇親をしたり、ゴルフしたりもする。それは仕方ない。でも私は、選挙では絶対にお金を使わない。これは私の流儀や。2001年と25年、2回県議会の議長になりましたが、どちらもお金は使っていません。
6年以上も前の録音が今出てきたことには首を傾げざるを得ませんが、吉松君には、中尾君にお金を渡したということを、録音以外でもきちんと実証しなさいと言いたいね」
「俺と麻生先生の間に取り交わされた約束がある」
1987年に福岡県議選で初当選した藏内氏は、そこから10期連続で当選。自民党福岡県議団会長などを歴任した藏内氏は、麻生太郎自民党副総裁や武田良太元総務大臣ら、福岡が地元の有力政治家に伍する実力を有するとされてきた。
「私は自分のことをドンだなんて思ったことはありません。ただ、彼らと喧嘩しているわけじゃないけど、国と地方では対立することもあるじゃないですか。そうなった時は、感情的になるのではなく、福岡、九州のためにはこの政策をやらんかい、とぶつかることもあります。それをマスコミは、『三国志』なんて喧嘩してるみたいに書いているけど(笑)」
藏内氏と長年にわたり確執がある中村明彦県議は、麻生氏の側近として知られる。今回の告発の背景に麻生氏はいるのか。藏内氏に聞くと、思いのほか淡々と答えた。
「確かに、中村がいる。彼は麻生先生を上手に使うわけ。ただ、俺と麻生先生の間に取り交わされた約束がある。自民党福岡県連には国会議員も含まれるから、麻生先生は口を出す。ただ自民党県議団は県議のみ。国会議員がいないから、こちらには口出ししないと。この信義については、今回も守ってくれていると思うね」
藏内氏がいかにして“福岡県議会のドン”となったのか、中央政界との関係、批判の対象となったワンヘルス問題など、9月10日発売の「文藝春秋」10月号では、「 『日本一悪い男』の告白 」と題し、藏内氏のインタビューを10ページにわたり掲載している(「文藝春秋」の電子版「文藝春秋PLUS」では、9月9日から先行公開中)。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2026年10月号)