「反高市の動きなの?」高市総理が警戒した参院実力者”更迭劇“の内幕…「本人はショックを受けていた」党内には亀裂も

第二次高市改造内閣が9月17日に発足した。総理周辺が「実力主義の革命的人事」と謳ったわりには、政権の骨格を維持したままの“マイナーチェンジ”にも写る。だが、党役員人事では、参院自民党の実力者の「更迭」という波乱が起きていた。
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維新から初入閣した中司氏には有罪判決の過去
高市早苗総理は今回、側近の木原稔官房長官をはじめ、片山さつき財務相や小泉進次郎防衛相など8人の閣僚を留任させた。その半面、来年の自民党総裁選へ出馬するとみられる林芳正氏は総務相から閣外というかたちになった。
「新閣僚は、総務官僚出身の藤井比早之氏が総務大臣に起用。また国交省出身の井林辰憲氏を国交大臣に起用し、元検察官の山下貴司氏を法務相として再登板させたりと、官僚出身者の登用が目立った。
一方で、裏金事件に関与した旧安倍派出身の簗和生氏が農水相、関芳弘氏が文科相にそれぞれ起用されました」(自民党関係者)
連立パートナーの日本維新の会からの“初入閣”について、馬場伸幸前共同代表や、藤田文武共同代表の名前が挙がっていたが、結局、規制改革担当相として起用されたのは中司宏氏だった。
「馬場氏は週刊文春と裁判中。一方の藤田氏は、今のポジションまで引き上げてくれた恩人の馬場氏を差し置いて入閣するのは都合が悪い。棚ぼた的に、中司氏にお鉢が回ってきたと言われています。
しかし、中司氏には枚方市長時代に談合事件で逮捕・起訴され、その後、有罪判決を受けた過去がある」(同前)
さらに深刻なのは、自民党の新役員人事だ。豊富な野党人脈を誇る実力者・石井準一参院幹事長が事実上の更迭をされたのだ。
「高市総理は先の国会で、3月末までに今年度予算を成立させたがっていた。しかし、いまだ少数与党状態にある参院では、強引な国会運営は許されず、審議時間の確保や高市総理の出席など、野党への配慮も必要になってくる。一連の経緯の中で 、国会への出席を嫌う高市総理が石井氏を問題視しはじめたとされます。
結局、総選挙を2月に行なったこともあり、予算成立は4月にズレこんだ。とはいえ、政府提出法案はすべて通せたわけですし、石井氏としては、むしろ参院の少数与党状態の中で奮闘し、感謝されこそすれ恨まれる筋合いはないという感じだった。
それでも、国会改革を謳う高市総理に対しては、『結局は自分が国会に出席したくないだけ』との見方も根強いです」(自民党ベテラン参院議員)
青木一彦氏の参院幹事長就任に石井氏は「ショックを受けていた」
石井氏が中心となり、4月に、新グループ「自由民主党参議院クラブ」が立ち上がると、高市総理の疑念はさらに深まっていったという。
「旧知の議員に『反高市の動きなの?』と問い合わせるなど、かなり気にしていたそうです。実際は、参議院クラブ自体は、これまでの旧派閥とは違う体制になる中で、参院自民党の運営を円滑化することを目的に設立されたものとされます。旧派閥のように、頻繁に活動をしていたわけでもない。
それでも、高市総理が気にする背景には、石井氏と敵対関係にある、世耕弘成衆院議員の影響を受けているのではないかという見方も広がったことがあります。
参議院クラブには、いまだに参院自民党に一定の影響力を及ぼそうとする世耕氏への対抗という側面もあったのは事実です。高市総理を擁護するYouTubeチャンネルなどでも、石井氏らの動きを『反高市の動き』とレッテル貼りするような論調も目立った」(同前)
こうした中で、党役員人事が近づくにつれて、石井氏の更迭論が相次いで報じられるようになった。
「本来は、参院からの入閣候補は、参院幹事長である石井氏がとりまとめて、松山政司会長に上申する。しかし、今回は、更迭前提だったため、石井氏によるとりまとめはなかったそうです」(別の自民党参院ベテラン議員)
とはいえ、総理の意向があったとしても、自民党の党則上、参院の人事は、参院会長が決めることになっている。つまりは、松山政司参院会長(旧宏池会)に決定権がある。
「総理の意向を背景に、一時は麻生派の有村治子前総務会長の参院幹事長起用が浮上しましたが、本人が固辞しました。他党との折衝が必要になる参院幹事長は、国対の役職経験がないと難しいのも一因でしょう。
こうした中、浮上したのが参院議運委員長を務めていた青木一彦氏でした。青木氏は“参院のドン”と言われた青木幹雄元参院幹事長の息子で、石井氏と同様に、参院平成研(旧茂木派)の出身です。二人の表面上の関係は良好とみられていた。
ところが、今回、石井氏は、青木氏が後任となることを全く根回しされておらず、ショックを受けていたそうです。石井氏に近い議員の間では、青木氏の『裏切り』と捉える向きまで出てきています」(同前)
高市総理「人事権は私にはない」
石井氏の更迭劇を受け、参院自民党内は混乱の渦中にあるという。
「昨年の参院幹事長人事を巡り、石井氏と確執を抱えていた関口昌一参院議長が、青木氏と相談した上で、松山氏に“青木参院幹事長”を進言したという話が出回っています。それを、高市総理の意向を忖度した松山氏が採用したという見方です。
いずれにせよ、参院自民党内に疑心暗鬼が広がり、バラバラになるような今の状況は、自民党にとって決して好ましくありません。与野党の調整などは、石井氏が野党人脈を駆使し、貢献していた面もある。
“石井外し”により、今後、国会運営において様々な影響が出てくるのではないかと不安視する声もあります。すでに石井氏に近い一部の議員が、国会の役職を引き受けないなどの動きも出始めています」(同前)
その一方で、こんな声もある。
「松山会長とすれば、石井氏を更迭したとしても、同じ参院宏池会出身の磯崎仁彦国対委員長とともに、官邸と連携して、スムーズにまわしていけるという自信もあったのではないか。
青木氏も、石井氏らの参院自民党クラブの結成に否定的だったとされ、本音では石井氏と距離があったという見方もあります。石井氏はもともと歯に衣着せぬ物言いをするタイプですし、参院で存在感を示していた半面、敵が多かった面も否めない」(自民党参院元職)
国対経験の長い自民重鎮はこう語る。
「議会は、政府から一定の独立をしていないといけないわけです。安倍政権時代であっても、きちんとした国会審議をやるために、国対が菅義偉官房長官など官邸とやり合うことも少なくなかった。そして官邸も結局は、国対に譲ってくれた。また、参院国対も、いざとなれば、すべてをなげうって、衆院側の国対に協力してくれたり……。
高市総理の意向がどうであれ、国会軽視といわれるようなやり方は慎むべきで、今後の国会運営が注目されます」
高市総理は参院自民党の執行部人事について「人事権は私にはなく、参院会長が決めたと承知している」と語った。しかし、総理の意向を背景として、参院自民党が揺れているのは間違いない。野党が反対している消費減税法案の審議など、難しい局面が続く中で、今回の人事が少なからず影響を及ぼしそうだ。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班