(遺族)
「事件の風化だけはよくない。短くない年月」
遺族がそう語った、短くない年月――。鹿児島市田上台で高齢の女性が殺害された強盗殺人事件から、9月16日で26年です。時が流れても消えない遺族の記憶、そして今も真相を追う捜査員。この26年という歳月に刻まれたそれぞれの思いを見つめます。
2000年9月16日。鹿児島市田上台の閑静な住宅街で事件が起きました。アパートを経営していた荒木スミエさん(当時73歳)が、1人で暮らしていた自宅の寝室で首を絞められ、死亡しているのが見つかりました。
室内に物色された形跡が残されていたたことなどから、警察は強盗殺人事件とみて捜査本部を設置。これまでにのべ約7万9700人の捜査員を動員し、約200人が捜査線上に浮上したものの、いまだ犯人の検挙には至っていません。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
事件を追い続ける捜査員がいます。鹿児島西警察署の餅田卓也巡査部長です。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「ここが現場」
今もこうして現場を訪れ、事件の解決に向けた糸口を探しています。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「(Q.この現場を歩いてきたが人通りも少なくて、目撃情報なども集まりにくい?)防犯カメラも少なく閑静な住宅街ということもあり、目撃情報は少ない」
それでも現場に足を運ぶのには、ある理由があるといいます。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「現場保存含め、事件発生前後に合わせて被害者方の清掃活動もしている」
現場保存――。
26年前に残された痕跡は、今も事件の真相につながる可能性を秘めています。
1999年11月、愛知県名古屋市の自宅のアパートで当時32歳だった主婦が殺害された事件。長年、未解決のまま迷宮入りも危ぶまれていましたが、去年10月、事件は急展開を迎えました。愛知県警は被害女性の夫と同級生だった女を逮捕。現場に残された血痕とDNA型が一致したことから逮捕の決め手になったということです。
愛知の事件が動いたのは発生から26年後――。田上台の事件もまた、発生から26年が経ちました。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「(愛知県の事件を見て)どれだけ月日が流れてもほんの少しの糸口が事件を解決できることを改めて実感した」
愛知の事件で芽生えた希望――。その可能性を科学の力が支えます。
(県警刑事部科学捜査研究所・櫻井実信副所長)
「当時と比較すると、DNA型鑑定をはじめとする科学捜査の技術は大きく進歩している。当時は試料の状態や量などによって鑑定が困難だったものも、現在ではより微妙な試料でもDNA型を検出・分析することができるようになっている。当時は捜査に十分生かせなかった試料も新たな捜査上の手がかりとして今ヒントとなる可能性が出てきている」
科学技術で捜査を支える科学捜査研究所、通称「科捜研」。科学捜査のエキスパートも、時代とともに進歩する技術を駆使しながら、あの日の真相を追い求めています。
(県警刑事部科学捜査研究所・櫻井実信副所長)
「DNA型もまだ走りの頃だったので、今ほど重要視して試料採取されているわけでもなかったようなので、そういう面も含めて今のような科学捜査がうまくいっている時代ではなかった。科捜研としてもさらなる科学捜査や科学技術の発展にアンテナを張って、事件の鑑定に絶大な効果が得られるようにDNA型鑑定だけでなく、あらゆる分野の鑑定も行っているので、今後とも捜査に寄与していきたい」
普段は立ち入ることのできない捜査の中枢を担う捜査本部。今回、特別に入らせてもらいました。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「これが捜査資料です」
並べられたのは、事件当時から現在まで積み重ねてきた資料。これまでの捜査員たちが何を見て、何を疑い、何を追ったのか。捜査結果の報告書や証拠品に関する資料など、膨大な捜査の記録がそこには残されていました。この1つ1つが事件から長い時の経った今でも、真相解明に向けたカギを握っています。
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
「(Q.餅田さん自身は事件発生当時、どういう立場で事件を見ていた?)事件発生時は学生で、正直この事件を認識していたかは記憶があいまい」
(鹿児島西警察署刑事第一課強行犯係・餅田卓也巡査部長)
(Q.今、どのような思いで事件の捜査に携わっている?)事件発生から26年が経過し、私のように事件発生後に警察官になった者も多くいる。県民の方々に情報提供を呼び掛けることも大切だが、まずはより一層職員がこの事件について関心を持ち、事件解決につながるような情報がないか意識を持って、業務に取り組むことが重要」
事件から26年となった9月16日――。県警はチラシを配りながら、道行く人々に情報提供を呼びかけました。
このチラシに託されているのは、捜査員たちの執念だけではありません。
一日も早い事件解決を願い続けてきた家族の思いもまた、そこには込められています
(荒木さんの娘)
「時間だけは20何年経っているが、そんなに遠いことではない、私にとっては…」
荒木さんの一人娘は、母が亡くなった時の年齢をすでに超えました。
(荒木さんの娘)
「私が言うのもおかしいが、しっかりした子供思いの気丈夫な母親。遠い昔の事件とか記憶にないという人も多いが、まだその時のこと、事件の報道のことがまだ記憶の中にしっかり残っていたり、生活の中でも残っている人たちも多いはず。複雑な思いの中で今でも生活している」
捜査員が追い続けてきた26年。同じ時間を、家族もまた、生きてきました。今、願うことは――。
(荒木さんの娘)
「事件のこと、母親のこと、1日も忘れたことはない。時間だけは流れてきている。しかし事件の風化だけはならないように本当に切に思う」
犯人逮捕につながる有力な情報の提供者には400万円の懸賞金が支払われることになっています。事件から26年、今もなお警察、そして家族は事件の真相を追い求めています。情報提供は、鹿児島西警察署(099-285-0110)まで連絡してほしいということです。
(KYT news.everyかごしま 26年9月16日放送)