政府は、28日に初会合を開いたインテリジェンス(情報活動)機能の強化に関する有識者会議で、外国によるスパイ行為を阻止するための法整備を進める方針を明らかにした。刑事罰を含む「外国干渉防止法」(仮称)の制定が念頭にある。有識者からは国民の理解や透明性確保が不可欠との指摘が出ており、慎重に制度設計を進める。
初会合では、当面の論点として政府が策定する「国家情報戦略」と、「外国からの不当な干渉の防止策」を重点的に議論していく方針を確認した。
政府側は会議で、外国勢力による工作活動の具体例として、ロシアの情報機関員とみられる人物が日本の機械会社の従業員に接触し、金銭を提供して機密情報を不正取得した事件などを挙げた。その上で対抗手段として「法制度を含むカウンターインテリジェンスの強化」が急務だと訴えた。
法制度は、8月に自民党が提言をまとめた外国干渉防止法を軸に検討が進む見通しだ。外国情報機関からの金銭受け取りや国家機密の漏えいに罰則を科すほか、外国勢力のためにロビー活動などを行う人物の登録を義務化する。
有識者会議の構成員でロシア情勢に詳しい廣瀬陽子慶大教授は会合後、記者団に「これまでの常識では考えられないルートで漏れる情報が増えている」と指摘し、インテリジェンス機能の強化に理解を示した。一方、会議では「国民や国際社会の理解」のほか、強まる政府権限に対する「国会報告などの民主的統制」を求める声も相次いだ。
政府はこの日、「対外情報機能の充実」を目指す方針も示した。自民提言は、テロや安全保障関連の情報収集・分析機能を強化するため、米中央情報局(CIA)などに倣った「対外情報庁」(仮称)の創設も盛り込んでおり、有識者会議でも中長期的な論点として検討していく見通しだ。
情報収集強化 米欧でも
外国のスパイ活動やテロへの対策として、米欧などは情報収集体制や法の整備を進めてきた。政府の権限を強める一方、監視の乱用を防ぎ、報道の自由やプライバシーを守る仕組みも設けている。
外国からの不当な干渉を防ぐため、米英仏と豪州、カナダなどは、外国政府のために政治への働きかけを行う組織などに、依頼主や活動内容の開示を求める制度を整えている。対象や除外規定は異なるが、外国の関与を明らかにする狙いは共通する。
豪州は2018年、英仏は25年、カナダは26年8月に制度を開始した。
先行した米国は1938年、ナチス・ドイツの宣伝工作への警戒を背景に、外国代理人登録法を施行した。その後、改正を重ね、外国のために活動する者に依頼主や資金源を開示させ、国民が情報の背景を見極められるようにした。
2024年の米大統領選前には、米司法省がロシア国営メディア「RT」の職員2人を同法違反の共謀などで起訴した。資金源を隠して米国の動画制作会社に約1000万ドル(約15億8000万円)を提供し、世論に働きかけたとしている。
組織間の連携も強めた。米国は01年9月11日の同時テロで情報共有が不十分だった反省から、各情報機関を統括する「国家情報長官室」を新設し、05年に活動を開始した。英国は03年、各機関のテロ情報を共同分析する合同テロ分析センターを設置。フランスも17年、大統領府の情報・テロ対策の調整体制を強化した。
情報収集や共有の強化と並行し、政府の監視を第三者がチェックする仕組みも設けている。米国は1978年の外国情報監視法で、通信監視の条件と専門裁判所の審査手続きを定めた。英国は2016年の捜査権限法で通信傍受などのルールを整備。通信傍受などには原則、閣僚の許可に加え、裁判官経験者らが務める「司法コミッショナー」の承認も必要とした。