トランプ大統領と習近平・国家主席が手を握った”米中接近”が注目されるなか、日本はどう動くべきか。世界情勢が大きく揺れ動くタイミングで高市早苗・首相の「演説」が波紋を広げている。国連憲章の敵国条項の削除──確かに日本政府として求めていくべきことに間違いないが、”言うだけ”で終わるのであれば、むしろ弊害のほうが大きくなりかねない。【全3回の第1回】
米中首脳会談「同盟国発言」の衝撃
高市首相の国連演説をめぐって日中間で激しい火花が散った。
米中首脳会談に先立って訪米した高市首相は、トランプ大統領と会談した後に国連総会で初の演説(9月22日)に臨み、「(国連憲章の)旧敵国条項は早急に削除されるべき」と訴えた。
「国連中心主義」を外交の原則に掲げる日本政府にとって国連憲章にある敵国条項(53条、107条など)の撤廃は基本方針だが、日本の首相が国連演説で敵国条項削除を求めたのは2005年の小泉純一郎・首相演説以来約20年ぶりのことだ。
「さすが保守の高市さんだなと受け止めた」と語るのは保守論壇の大物で政治学者の中西輝政・京都大学名誉教授である。
「敵国条項とは、日本、ドイツ、イタリアなど旧枢軸国が再び侵略国として動く兆候があれば、国連加盟国は安全保障理事会の決議なしにそれらの国に対して自由に攻撃していいとの内容が書いてある。日本にとってとても危うい項目。本来なら日本が国連に加盟する時点(1956年12月)で削除を求めるべきでした。
しかし、当時の日本は早く国際社会に復帰しなければ国民生活も経済も立ち行かないという状況で、政府は背に腹は代えられないと飲まざるを得なかった。その後、何度か削除に向けたエポックメイキングな動きがあったが、条文そのものは今も残っている」
高市演説に対して中国の孫磊・国連次席大使は国連総会での討論で「高市政権は日本の歴史的犯罪に目をつぶり、軍事力拡大を隠蔽しようとしている」と批判し、敵国条項は「戦後の国際秩序を維持する制度的な保護を提供するもので、現在も極めて重要」と撤廃に反対、梅津茂・国連次席大使が反論するなど日中の論争となっている。
ところが、そのさなかに日本が予期していなかった動きが起きた。
トランプ大統領が国賓として招いた習近平・国家主席の歓迎式典で中国を「第2次世界大戦時の同盟国」と呼び、中国で日本軍と戦った米国人義勇兵部隊「フライング・タイガース」に触れて「彼らの活躍はまさに信じがたいものだった」と言及したからだ。