「なぜうちの裏側だけ」台風25号による土砂崩れで妻を亡くした男性が原因究明求める

先月の台風25号による土砂崩れで、神奈川県横須賀市に住む64歳の女性が亡くなった。女性の夫が取材に応じ、「なぜうちの裏側だけ崩れたのか理由を知りたい」と語った。
【画像】土砂崩れが起きた現場
先月21日、台風25号による大雨で、横須賀市長井の2階建て住宅に土砂が流れ込み、この家に住む横山淳子(よこやま・じゅんこ)さん(64)が亡くなった。夫の一郎(いちろう)さんがANNの取材に応じ、「1、2秒。一瞬のことだった」と当時の状況を振り返った。
妻の声、直後に家を襲った土砂
あの日、自宅のリビングにいると、裏手の斜面から水が流れ落ちる音が聞こえてきた。「音がしているね」淳子さんにそう声をかけ、午後1時30分すぎ、一郎さんは自宅裏の斜面の様子を確認した。
流れていたのは、うすく濁った水。「泥水ではない、これまでの大雨に比べたら、まだ大丈夫」一郎さんはそう感じた。ただ、この先のことも考え、側溝にたまった落ち葉をかき出して水の通り道を作り、駐車場周辺にはレンガを積んだ。その後、自宅に戻り、シャワーを浴びて着替え、リビングの2人がけのソファに座って、テレビを見ていた。
「やれやれ、淳ちゃん、水が濁っていないけど、すごい出ているから定期的にチェックしないといけないね」
午後1時50分ごろ、台所では、淳子さんが野菜を切っていた。その時、淳子さんが「何だ、これは」と声を上げた。直後、「ドン」という大きな音とともに、地震かと思うほど、自宅が激しく揺れた。その間、わずか1、2秒。一瞬の出来事だった。
一郎さんが振り返ると、土砂が台所に流れ込んでいた。一郎さんは立ち上がり、「淳ちゃん、返事しろ」「淳ちゃん、返事しろ」と、淳子さんの名前を何度も呼んだ。しかし、返事はなかった。窓から外に出て、玄関で靴を履き、警察と消防に通報した。
消防隊が到着したのは、およそ30分後だった。「泥の向こうに空間があって生きているのではないか」その間、自らなんとかできないか裏に回ろうとしたが、土砂や倒木に行く手を阻まれ、淳子さんのもとへ向かうこともできなかった。
がけ崩れの兆候はなかった
横山さん夫妻がこの家で暮らし始めておよそ28年。家の近くに畑を借りて、野菜を育てるのが2人の日常だった。年に2,3回、台風や大雨の際に、自宅の裏手から水や泥が流れてくることがあった。それでも土砂が自宅まで流れてきたことはなく、「裏のがけ崩れの兆候はこれまでなかった」と話す。道路に数センチほど泥がたまることもあり、そのたびに横須賀市に連絡し、道路にたまった泥を取り除いてもらっていたという。
土地の所有者に対応するよう伝えてほしいと、市に依頼もしていた。市は所有者に対し、適切に管理するよう、口頭で指導していたという。また、周辺で県が急傾斜地崩壊対策事業の工事をしていたため、同様の対応をしてもらえないか、要望したこともあったという。ただ、「税金でやっているため、要望があったからといってできない」という趣旨の返答だった。
なぜ、ここだけが崩れたのか原因を知りたい
「『何だ、これは』という妻の最後の一言は、一生忘れない」時折、声を詰まらせながら一郎さんは取材に応じてくれた。
自宅の裏にあるのは2段ほどの畑だと聞いていた。「残念ながら、がけ崩れの予兆があるからなんとかしてくれと行政に言ったことは一度もない。崩れると思っていなかったから、畑だと聞いていたから」
今、知りたいのは、土砂崩れが起きた原因だ。一郎さんは、周囲のすべてが同じように崩れたわけではないことに疑問を感じている。
「なぜうちの裏側だけ崩れたのか」土砂と木がどのように住宅に流れ込んだのか、なぜこの場所で崩落が起きたのかを知りたいと話す。「まさか土砂崩れが起きると思わなかった。客観的に原因を究明してほしい」