《リベラルは再生できるのか》千葉商科大学教授・常見陽平氏が分析「多くの国民が根っこの価値として“安心”を求めているということを理解するべき」

中道改革連合の解体、沖縄県知事選での玉城デニー氏の敗北など、リベラル勢力の退潮が鮮明となっている。なぜリベラルは支持を失い、対抗軸を示せなくなったのか。そして再生する道はあるのか。作家、千葉商科大学教授の常見陽平氏が分析する。
リベラル政党は国民の実感をどこまで掴んでいたのか
日本のリベラルが大切にしてきたのは、「自由」と「寛容」のはずです。自由は国家や伝統的な規範からの自由であり、寛容は多様性と言い換えてもいい。ただ、中道改革連合とその源流となる立憲民主党、そしてリベラル言論人は大切なこの2つを見失っていたのではないかと考えています。
政策では国民の生活実感からかけ離れていました。選択的夫婦別姓やジェンダー平等を掲げたけれど、いずれも重要な政策である一方で、政治家が上から授けるような語り口になり、人々の切実な生活実感と十分に結びついていなかったのではないか。
賃上げの恩恵に与れない非正規はもちろん、フリーランスやギグワークを掛け持ちするような人たちは、不安定な暮らしを強いられています。正社員を含めた中間層も、必ずしも支援の対象として捉えられず、重い社会保険料負担や転落への不安を抱えているのです。
時間もお金もない若者が求める価値も安心です。とりあえずコンサルに就職する若者は、生活不安をかき消すように競争に勤しみ、給料は安くとも配属ガチャのない企業を選ぶ若者は、東京暮らしを続けて安堵している。どちらも根っこの価値は安心なのです。
リベラル政党は、そうした国民の実感をどこまで掴んでいたでしょうか。
参政党が支持を得たのも、「日本人ファースト」以外の主張――でたらめ交じりでも、桁違いの減税など有権者の不安に働きかけるものであったことは見逃せません。
左派リベラル系の言論にも問題があったと思います。立場を超えた幅広い議論が必要なのに、左派リベラル系のYouTubeチャンネル同士はほとんどコラボしないうえ、ジャーナリストの望月衣塑子氏が日本保守党の百田尚樹氏と対談しただけで、「ヘイト容認か」とSNSは大炎上でした。
思想家の東浩紀氏や私がリベラルをよくしたいと願うからこそ批判を口にすれば、「ネトウヨ」「闇落ち」と批判の嵐。この界隈はタコ壺化し、内ゲバを繰り返して仲間を失っているのです。
再起動させられる政治家は見当たりません。まずは言論界から、右も左も関係なく、自由に議論ができる寛容な空間を作るところから始めてはどうかと考えています。
【プロフィール】 常見陽平(つねみ・ようへい)/会社員やフリーとして勤めた経験を活かし、働き方や就活事情について執筆・講演を行う。著書に『なぜリベラルは嫌われているのか』(星海社新書)。
※週刊ポスト2026年10月30日号