持ち家を売却後も賃料払い住み続ける「リースバック」、国交省が規制強化…業者が悪用「押し買い」などトラブル多発

売却した持ち家に賃料を払って住み続ける取引「リースバック」を巡り、国土交通省は今月、宅地建物取引業法に基づく新たなガイドライン(指針)の運用を始めた。不動産業者が強引に安く買い取る「押し買い」などのトラブルを防ぐため、指針で同法違反となる行為を明示し、悪質な業者の取り締まりを強化する。(高田悠介)

「火災保険に入りませんか」。東京都世田谷区のマンションに暮らす70歳代男性の自宅に、不動産会社から電話があったのは6月下旬頃。火災保険には加入していたが、「見直しもありか」と思い、自宅で話を聞くことにした。
7月初旬、自宅を訪れた男性社員2人は、火災保険の話はほどほどに「まとまったお金が手に入る」とリースバックを勧めてきた。
2K(40平方メートル)の自宅は、約30年前に約2600万円で購入し、一人で暮らしてきた。住宅ローンは退職金で完済。「ついの住み家」を売却する考えは全くなかったが、「リースバックが可能か審査するだけ」との社員の説明を信じ、複数の書類にサインした。
銀行から突然、「1800万円が口座に振り込まれた」と連絡が来たのは8月。振り込んだのは、あの不動産会社だった。
男性が同社に説明を求めると、社員が自宅を訪れ、不動産売買契約書や取引完了確認書を突きつけてきた。そこには2000万円で自宅を売却し、月額19万5000円で賃借すると記され、なぜか男性のサインも。「契約書にサインをした覚えはない」と抗議したが、「手続きは終わっている」と聞き入れられなかったという。
男性宅はその後、別の不動産会社に2000万円以上で転売されていたことがわかった。男性は「愛着のある家なので、元の状態に戻してほしい」と訴え、法的手続きを進めている。
男性宅を購入・転売した不動産会社は29日、読売新聞の取材に「取材は受けかねる」とコメントした。
リースバックは、老後のための資金調達などを目的に高齢者を中心に需要が広がる一方、相場の半額程度で安く買い取り、その何倍もの値段で転売する悪質な取引も横行している。
国民生活センターによると、リースバックに関する相談は近年、年250件前後で高止まりしている。当事者の8割弱が60歳以上で、「長時間勧誘され、仕方なく契約書にサインしてしまった」「リースバックの契約家賃が突然高くなり、これ以上払えない」などの相談が寄せられている。
同センターは「住民が売り手となる自宅の売却は宅建業法のクーリングオフ制度の対象外であることも、トラブルが絶えない要因となっている」と話す。
こうした状況を受け、国交省は住宅のリースバックに関する宅建業法の運用指針を策定し、取り締まりを強化することにした。
指針では、同法が宅建業者による売買契約の勧誘で禁止する「拒絶後の勧誘継続」「長時間の勧誘」について、リースバックにも当てはまると明示。家賃や契約期間、賃貸借契約の解除条件を告知しなかったり、事実と異なる説明をしたりした場合も、業務停止命令や宅建業免許の取り消しなどの行政処分や刑事罰の対象になると明記した。
国交省は「業者側は『違法行為とは知らなかった』とは言えなくなる。厳格に適用して悪質な業者を取り締まり、市場を健全化する」としている。
消費者問題に詳しい藤田裕弁護士は「国は『高齢者が当事者になる場合は親族が立ち会う』などの法規制も導入し、より根本的な問題の解決を目指すべきだ」と指摘している。

→売却の意思がない場合は「売りません」と明確に伝える。
→業者との会話を録音し、やり取りの記録を残す。
→売却額の相場を別の複数業者に確認する。
→将来的に賃料の合計が売却額を上回る可能性もあるため、「逆転」が起きるまでの期間を計算する。
→契約に定められた期限が終了したら更新ができない「定期借家契約」になっていないか、修繕費は貸主と借り主のどちらが負担するのかなども事前に書面で確認する。