[高市政権1年]
――高市政権の1年間をどう評価するか。
高市首相は、1人で政権運営をしようとする「ワンパーソンポリティクス」の傾向がある。だから安倍政権で「全世代型社会保障」や「地方創生」を打ち出したように、省庁横断で未来志向の大きな政策を推進できていないという印象を受ける。各省庁でそれぞれ政策を作っており、首相官邸で主導できていない。
――内閣支持率は高い。
大きな失敗がなく、憲政史上初の女性首相で、非世襲であるというストーリーへの好感は、国民の中で維持されている。働いても手取りが増えない状況が続いていた日本の閉塞(へいそく)感を打破してくれるという期待感もあるだろう。だが、期待感は徐々に薄れてくる。チームに仕事を任せ、それぞれが自律的に動けるようにしなければ、長期政権は難しい。
――日本維新の会と自民党で連立政権を組んだ。
とがった維新の主張を首相が自民にのませる局面がたびたびあった。首相にとって維新は、自民内を統制する重要な政治資源にもなっている。ただ、両党の関係は、選挙協力が基盤だった自民と公明党による連立政権と違い、首相と維新の吉村代表の個人的関係に依存している。自民内では維新に不満もあるが、首相と維新の関係が良いので我慢している。首相が交代すれば、維新との連携は難しくなる可能性がある。
――首相と自民党との関係はどうか。
政策の大方針を示した後、密にコミュニケーションをとっているようには見えない。消費税減税の方針には党内に異論もあったが、反発の芽を丁寧に摘んだ上で、政策を前に進めようとする戦術は感じ取れなかった。
――派閥の多くが解消された影響は。
派閥がないことで自民内がバラバラの砂のような議員集団になり、首相への有力な対抗馬も出てこない。「政治とカネ」の問題に決別した上で、政策グループは当然あるべきだ。
――今後の政権課題は。
参院では少数与党が続いており、野党ともうまく駆け引きしなければならない。首相は世論の高い支持をバックに持ち、国会では、野党に花を持たせるような配慮もほとんどなかった。だが、内閣支持率が下がれば下がるほど、野党は与党が簡単にのめないような高い球を投げるようになり、法案審議に手こずる可能性は高い。国会の混乱が続けば、政権への不信感が増すという悪循環にも陥る。
――来年の自民総裁選で首相再選の可能性は。
今の支持率を維持していれば、再選の可能性は非常に高いが、支持率が落ちてくれば、ライバルも名乗りを上げてくる。看板政策の「責任ある積極財政」も、米国や市場からの強い警戒感で、大きく踏み込めなくなっている。再選を目指すなら、目下の課題に対応するだけでなく、次の総裁任期で何をやりたいのかをしっかりと示すべきだ。(聞き手 大嶽潤平)
まきはら・いづる 東大法卒。東北大教授などを経て2013年から現職。専門は行政学、日本政治史。政治家へのインタビューや史料分析を重ね、戦後政治の研究に取り組む。著書に「崩れる政治を立て直す」(講談社現代新書)など。58歳。