コメ離れで広がる飼料用米への転換 鶏ふんリサイクルも

主食用米の消費量減少が続く中、飼料用米の栽培へ転換する動きがじわじわと広がっている。山口県内の作付面積は2008年の4ヘクタールから今年度は893ヘクタールに拡大。飼料用米で育った鶏のふんを発酵させた堆肥(たいひ)を水田に戻して栽培に生かす地域循環の取り組みも進むが、今後の利用拡大には課題もある。
夏を感じさせる暑さが残る9月26日。県内外で鶏肉や鶏卵、牛乳、無農薬野菜などを生産する秋川牧園(秋川正社長、山口市)と、取引農業者の現場視察会が山口市南部で開かれ、中国四国農政局山口県拠点職員や農研機構西日本農業研究センターの研究者らを含む数十人が集まった。
秋川牧園が飼料用米に注目したのは08年ごろ。当時は原油価格高騰とそれに伴う世界的な食糧事情の逼迫(ひっぱく)が懸念された上、遺伝子組み換えでない飼料を確保する方法の一つとして注目した。山口市秋穂二島の試験田0・3ヘクタールで栽培を始め、シンポジウム開催などを通し、農業者にも参加を呼び掛けた。現在では、鶏用飼料の材料のうち2~3割を米に切り替え、昨年度は約5600トン(もみ重量換算)を使用した。このうち県内では約20軒・法人から910トンを調達している。
鶏ふんは発酵して堆肥にし、取引農業者に無料で配送。水田に投入することで地力の向上と肥料代節約にもつなげている。取引農業者が参加する年2回の現場視察会を通して技術も磨き、10アール当たり1トンを超える多収穫を実現して、国の「多収日本一コンテスト」の上位入賞者が続出している。

飼料用米には、農業者にとっての魅力もある。
山口市南部140ヘクタールの農地で食用米や飼料用米、小麦や野菜などを生産する農事組合法人二島西の福江豊代表理事(70)は「主食用に比べて早く田植えし、遅く稲刈りをすることが可能で、農作業を分散することができる」と話す。
助成金も収入に
助成金を含めた収入も魅力だ。生産量が多い農業者が受け取れる最高額の助成金10アール当たり10万5000円に販売収入を加えると、約10ヘクタールで栽培している飼料用米の収入は1400万円あまりに。一方、主食用米の売り上げは、これよりもやや低くなる上「肥料代や農薬代などの経費は飼料用米よりもかなり多くかかる」(福江さん)。
中国四国農政局山口県拠点の佐藤裕一・地方参事官によると、全国の畜産業者の推測では全飼料のうち約450万トンを飼料米に切り替えることが可能と推測されている。国の飼料用米生産目標の110万トンも、ここから導き出された数字だが、飼料用米の生産を今後も広げるためには、課題もある。
畜産業者の利用拡大が課題
福江さんは、飼料用米を利用する県内の畜産業者が少ない点を指摘。「JAなどが畜産業者とどのように仲介してくれるのかが課題で、畜産振興も必要だ」と語る。一方で、畜産業者から発生するふんの再利用も課題で、農政局担当者は「堆肥としての利用サイクルを作らないと家畜の数を増やせない。秋川牧園の例のように、地域での循環モデルを作ることが必要だ」と話している。【祝部幹雄】
飼料用米
鶏や豚、牛などの家畜向けの米。主食用米の消費量減少が続く中、国は飼料用米への転作を支援しており、収量に応じて10アール当たり5万5000~10万5000円を助成。2025年までに全国の生産量を110万トンに拡大したい考えだ。17年産では約49万9000トンに伸びたが、主食用米価格が上昇し、主食用米の栽培に再転換した農家も出て18年産は約42万6000トンに減少した。