予防医療について啓発し、病気を予防する具体的なアクションを行なう一般社団法人予防医療普及協会の「予防医療オンラインサロン~YOBO-LABO」会員限定トークイベントが、2019年8月22日に東京都港区のDMM本社で開催された。
協会の理事を務めるホリエモンこと堀江貴文氏と、顧問で産婦人科医の三輪綾子氏が、糖尿病の専門医で医療スタートアップLinc’well代表取締役の金子和真氏をゲストに招いて、糖尿病の正しい理解と予防を広める方策を語り合った。
トークイベントの模様を前・後編の2回にわたってお届けする。前編では、一般の人が気付いていない糖尿病の怖さについて、金子氏から話を聞いた。
一般の人が知らない「糖尿病の怖さ」
三輪: 今日は金子先生に来ていただきました。もともと東大病院の糖尿病内科を中心に8年勤務されて、その後マッキンゼーで7年間、勤務した経歴の持ち主です。ITをフル活用した“次世代クリニック”ブランドの「クリニックフォア」も大盛況と聞いています。糖尿病の専門医でもある金子先生に、糖尿病のお話とITと医療などについて、スライドを交えながらお話いただければと思います。
金子: 私はご紹介いただきましたように内科医で、糖尿病の専門医です。マッキンゼーで仕事をして、昨年スタートアップを立ち上げました。まず糖尿病がどんな病気なのかを説明したいと思います。
糖尿病は医者にとっては常識ですけども、詳しく知らない人が多いのかなと思っています。がんは、命に関わるすごく怖い病気というイメージを持っていますよね。それに対して糖尿病はどんなイメージかというと、おそらく「健康診断で血糖値が高いって言われたよ、ハハハ」みたいな感じで、軽く流して大丈夫みたいな病気と思っているのではないでしょうか。
確かに最初は血糖値が上がるだけで、症状はありません。ところが、10年くらい放っておくと、足が腐ったり、目が見えなくなったり、透析が必要になったりします。結構大きな疾患ですが、ほとんど認知されていないのではないでしょうか。さらに脳梗塞などの原因になって、寝たきりになる方もたくさんいます。
糖尿病予備群の方もすごく多いです。肥満で、血糖値が少し高い人まで入れると、2000万人くらいいます。日本人の5分の1から6分の1くらいの方が予備群を含む糖尿病患者です。予備群2000万人の多くの方から糖尿病になる方は、生活習慣が原因の2型糖尿病ですね。
生活習慣に関しては、食べ過ぎはやはりよくないです。例えばガッツリ系のラーメンなどは非常においしいですが、カロリーが結構高いですから、食べすぎると肥満になって、糖尿病になりやすくなってしまいます。
堀江: スライドに写っているラーメンは、WAGYU MAFIAがプロデュースしているラーメン(WAGYUJIRO、ワギュジロー)ですね(笑)。
金子: そうですね(笑)。みなさんあまり意識していないかもしれませんが、完全に目が見えなくなると、民間の保険では死亡と同じ保険金が出ます。失明というものは、それくらいクリティカルな状況だと社会的には認知されています。透析もイメージがわかないかもしれませんが、週3回、1回4時間もベッドに横たわりながら、具合が悪くなるといった状態で、非常にQuality of Lifeが悪くなる状態です。
三輪: 血液透析は、静脈と動脈をつなぎ合わせるシャントの手術をして、そこに針を刺して、血液中の不必要な物質を外の機械でろ過します。週3回、1回約4時間かけて自分の血液をきれいにするんですよね。
金子: 透析では針を刺したり刺されたりするのもつらいですが、どちらかというと全身の具合の悪さや旅行に行けなくなるといったダメージや制限事項が大きいです。
堀江さんが書籍『健康の結論』(KADOKAWA)で書かれていますけれども、やはり予防していくことが重要ですし、食生活と運動は大事です。分かっている人は当然やりますが、分かっていない人にきちんと糖尿病のリスクを伝えて、予防の重要さを理解してもらうことが必要だと思っています。
若い世代が受診できる環境が必要
三輪: 糖尿病はずっと潜んで、忍び寄ってくる病気です。また、女性の場合は「妊娠糖尿病」にも注意が必要ですね。もともと糖尿病ではない方が、妊娠することで胎盤から出るホルモンが血糖値を下げにくくするために発症します。出産後には妊娠糖尿病は軽快することがほとんどですが、妊娠糖尿病と言われた人は、言われていない人よりも糖尿病になる確率が7倍くらい高いとみられているので要注意です。
金子: 私は糖尿病と診断された人が、治療を受けずに放置しているのも大きな問題だと感じています。若い世代の患者さんは忙しくて、病院に行こうと思ってもなかなか行けませんよね。待ち時間も長いですし、きちんと通院している患者さんはお年寄りばかりです。
日本には約10万軒のクリニックがありますが、95%が個人経営のクリニックです。しかも、開業医の約80%が50歳以上で、患者さんの75%以上も50歳以上。現在の日本のクリニックの多くは、高齢医師による高齢患者向けのサービスになっています。
この状況を変えて、若い患者さんでも、きちんと治療を受ける場を作りたい、そこには新たなテクノロジーを入れ込みたいと思って、スマートクリニックの「クリニックフォア」を作りました。
このスマートクリニックでやっていることは特別なことではありません。ネットで予約がとれて、キャッシュレスで支払いができ、検査結果はオンラインで共有します。どこに行ってもカルテが共有されているような状況を作る取り組みを進めています。
去年10月に田町に最初のクリニックを作りました。今年11月に新橋、12月に飯田橋に作る予定で、どんどん増やそうと思っています。80%以上の患者さんがオンラインで予約して来院されていて、待ち時間がなく、ネットで予約できて便利だったといった評価をいただいています。
患者さんは若い人が非常に多いです。働く世代にフォーカスしたクリニックを今後も展開していきたいと思っているところです。
堀江: こういうクリニックって、ありそうでなかったですよね。
金子: みんなあるといいなと思っていましたけど、開業するドクターは高齢の方が多いので、そこまでやる人がいなかったのではないでしょうか。
堀江: ファイナンスをつければ絶対にできるはずですよね。
金子: それはおっしゃる通りですね。まあ、医療の場合はドクターが必要だという前提があったりして、それが結構厄介なんですよ。
堀江: そうですよね。予防医療普及協会でも予防専門のクリニックをつくろうという話をしているんだけど、誰が管理医師をやるのかという話に絶対なってしまうので、それが問題ですよね。
金子: おっしゃる通りですね。
三輪: クリニックフォアには、せっかく若い世代が受診されているので、予防を働きかけることもできますね。
金子: ひとつの特徴は、オンラインで予約を取っていただいているので、こちらからも直接リーチが可能なことです。予防の啓発活動もできると思っています。スマホでライフログの管理もできれば、そこから早期介入もできるようになりますね。
大学の医学部で経営も教えるべき
三輪: 確かにデータを取る上でも、ITを取り入れていくのは必要ですよね。
堀江: でも電子カルテは、おそらくみなさん共有する気がないですよね。同じ医療法人なのにデータを共有しないことに、以前頭にきたことがあります。
6年くらい前、腎臓結石をESWL(体外衝撃波結石破砕術)で破砕するオペを受けた時、事前に系列の病院でMRIやCTを受診したのに、オペをする病院でまた受けさせられました。「データを持っていけばいいのに」と言っても、ダメだと言われました。半日かけて順番待ちをしましたが、ほぼ待ち時間ですよ。
金子: 時間の無駄は当然ですが、MRIやCTには保険を使っているので、2回検査をやるということは医療費の無駄使いではありますよね。
三輪: 本当に非効率ですね。
堀江: 既存の医療業界の方は、改革をする気がないのだと思います。だから医療業界は課題だらけですよ。ドクター以外は入ってくるなみたいな雰囲気もすごく感じます。
三輪: ドクターは外からの空気を入れたがらない風潮はあるかな。
金子: ヒエラルキーがあって、医局の支配が年功序列になっていますから、医者の言うことしか聞かない医者ばかり多くなっている可能性もありますね。医局はよく「ギルド」にも例えられます。
堀江: でも最近は面白い医者もいますね。研修医になった瞬間に病院をやめて、バイトばかりやる人。1カ月に10日だけ検診や予防接種をやって、あとの20日間は遊んでいますと話している人がいました。
三輪: 意外とバイトだけでもしっかり生活が成り立つので。
金子: 自分の好きなことが分かって、フォーカスするのはいいことだと思いますけども、それでは医者としてのスキルアップはないですよね。
堀江: そうですね。ただ、スキルアップしている医者が、いい経営をしているかというと、そんなことはないですよね。
金子: それはおっしゃる通りです。医療はスキルが身についたとか、専門医になったとかで別に収入が増えるわけではありません。それで経営が分かるわけでもありません。単に職業としては、職人のようなものですね。患者さんを診療するという臨床のスキルが磨かれるということです。
三輪: 横のつながりもないですね。金子先生みたいに臨床をある程度やって、そのあと経営のことも勉強された先生は少ないですから。
堀江: 経営を教えればいいんですよね。大学に経営コースみたいなカリキュラムを入れるべきなんですよ。誰も経営を学んでいないでしょう。たぶんB/S(貸借対照表)もP/L(損益計算書)も分からないですよね。
金子: 分からないですね。6年間医学の勉強しかしていないですから。
堀江: あれだけ頭がいいんだから、1単位くらい授業を入れれば、普通に理解すると思いますよ。
金子: 機会があればちゃんと勉強すると思います。
堀江: 僕もクリニックの経営にすごく興味があるので、ぜひ勉強させてください(笑)。
「足が腐る」「失明する」怖さをどう伝えるか
堀江: 予防医療普及協会では、今度糖尿病の映画を作ろうと思っています。糖尿病には、1型と2型がありますが、1型糖尿病のように、自己免疫性、感染症がきっかけで発症する不幸な方もいますけども、多くの方は生活習慣病が原因でなる2型糖尿病ですよね。
金子: そうですね。1型糖尿病を除くと、基本的には生活習慣が原因の2型糖尿病になります。
堀江: そういう人たちに刺さる何かがないと、多分変わらないだろうなと思って、映画を作ろうと考えました。それも糖尿病の恐ろしさを伝えるホラー映画にしようと思っています。糖尿病になると失明しますとか、足を切断しますとか、先ほど怖い話が出てきましたが、それを実際見た人は少ないと思いますよ。
取材したムービーを見ると、患者さんは45歳の女性でしたが、(血液透析により肌も黒く荒れており)めちゃくちゃ老けていました。20歳の頃に糖尿病と言われて、無視していたら足を両方とも切断して、透析を受けることになった方です。
三輪: 足を切断とか、失明とか、言葉で聞いても怖いのは怖いですけど、インパクトはないですよね。でも映像で見ると、日頃から医療に接している私でもやはり怖いなと思いました。あの映像を普段医療に接していない人が見るとかなり怖いのではないしょうか。
金子: 足が腐っている映像はえぐいですね。実際に足が腐っている患者さんは、匂いもすごいですし。
堀江: どんな匂いがするんですか。
金子: 腐っている匂いがします。
三輪: 膿の匂いですね。
堀江: 自分では臭くないのですか?
金子: 匂いがするとは思っていますが、慣れているんでしょうね。腐っていても神経をやられているので、痛くないんですよ。それで自覚症状がない。
堀江: でも布団とか汚れますよね。
三輪: 浸出液が出るので、汚れると思います。
堀江: どうやってケアしているのですか。
三輪: 化膿していたら洗浄して、悪い組織を削いでいきます。肉片が形成するところまで削って、肉が形成されるのを待ちます。
金子: 腐っているけど問題だと思っていない人も中にはいます。腐っている足を、そんなものかなと思って放置しているんですね。
堀江: 自分の健康に無関心で、それよりも甘いものをたくさん食べたいと考えているみたいな状態ですか。
三輪: 結果的にはそうですよね。
金子: もちろん全員じゃなくて一部の方ですよ。ただ、1000万人の1%でも、10万人になります。その人たちが病気だと理解していなければ、それだけひどい状態になってしまうということですね。
堀江: 病院に行きたくない気持ちもあるのでしょうか。
金子: 病院に行っても、なんとなく薬だけもらっているとか、病院に行っているから大丈夫といって、自分の糖尿病を積極的にコントロールしようと思っていない人は結構多いかもしれないですね。
堀江: 薬を飲んだらある程度コントロールできますよね。
金子: コントロールできる薬は増えてきています。だからこそ、糖尿病を理解して予防していくことと、早いうちに治療を受けることが非常に大事です。
三輪: インスリンを注射しなければならない状態になっても大変ですよね。薬を飲まない人たちが注射できるかといわれると、難しいと思います。
堀江: インスリンを注射する前の段階までに治さないといけないですね。
金子: おっしゃる通りです。元の状態に戻れなくなる「ポイント・オブ・ノーリターン」を超える前に、きちんと治療することが必要です。
ポイント・オブ・ノーリターンを超えさせないために
堀江: 僕は映画はわりと効くと思うんですけども。そういう人たちをポイント・オブ・ノーリターンを超える前に引き戻す方策を、他に何か思い付いたりしませんか。
金子: 恐怖心をあおる方法は、いままではあまり医療の中には取り込まれてきませんでした。逆効果になる可能性があるという意見もあるからです。きちんと病気を理解してもらえるように、患者に寄り添う医療の在り方が一つの方法です。
堀江: それは正論だと思いますが、具体的に何をすれば彼らは動くのかを、引き続き考えていきましょう。(後編は【後編】ホリエモンが斬る! “予防”というインセンティブなき「国民皆保険の欠陥」から読めます)
(フリーライター 田中圭太郎)
【編集部より】予防医療普及協会のオンラインサロン「YOBO-LABO」では、10月16日(水)に堀江貴文氏とRIZAPグループ瀬戸健社長との対談を、11月29日(金)には堀江貴文氏と猪瀬直樹氏との対談をともに18時30分からDMM.com東京本社で実施し、特別にサロンメンバー以外の一般参加も受け付けています。