高齢独居男性が死亡 「きちょうめん」「気の優しい人」 足腰悪く逃げ遅れたか 福島・須賀川

台風19号で市街地が浸水した福島県須賀川市では2人が犠牲となった。そのうちの1人、橋本昭寿さん(78)は、市中心部の同市館取町(たてとりまち)にある1人暮らしの自宅アパートで亡くなっていた。アパートから約200メートル北を流れている釈迦堂川は氾濫しておらず、この地区から釈迦堂川に流れ込む水路があふれたという。地区の住民によると、橋本さんは足腰が悪い上、近所づきあいも少なく、逃げ遅れたとみられる。
1~2カ月に1度、橋本さん宅を訪れていた民生委員の女性(69)によると、橋本さんは元タクシー運転手。宮城県に住む親族とも疎遠な様子で、町内会にも入っていなかった。訪ねるといつも6畳ほどの居間でこたつに座って静かに過ごしていた。
女性が「病院はどうしているの」「買い物には行けているの」と尋ねても、「大丈夫だから」と繰り返した。部屋には仏壇があり、両親と幼くして亡くなった妹のものだと話したという。
周辺の水が引いた14日朝、女性が訪ねると、部屋はドアが開いており、畳や家財道具が散乱する部屋で橋本さんが倒れていた。
近くに住む男性の話では、台風が接近していた12日午後10時ごろは周囲は浸水しておらず、自宅の1階で就寝中の13日午前0時ごろ、ベッドが揺れて目が覚めた。浸水し、床板が浮き上がったらしい。市は午前0時半ごろ、同地区が冠水しているのを確認している。橋本さんの部屋は、天井近くまで浸水の跡が残っていた。
橋本さんと同じアパートの別の部屋に住む山田佳子さん(67)によると、橋本さんは足腰が悪い様子だった。電話も持っていなかったらしく、買い物に行くためのタクシーは山田さんが代わりに呼んでいた。「タクシーを呼ぶときにも電話代だといって100円渡してくれた。きちょうめんな人だった」と話す。
山田さんは12日午後5時ごろ、一緒に避難するためアパートの別の住人とともに橋本さんの部屋の戸をたたいたが反応がなかったため、仕方なく避難所に向かった。「気の優しい人だった。助けてあげられなかったのは悔いが残る」とうつむいた。【渡部直樹】