公立福生病院(東京都福生市)で、都内の腎臓病患者の女性(当時44歳)に対して外科医が人工透析治療をやめる選択肢を示し、同意した女性が亡くなった問題で、女性の夫(52)と次男(21)が17日、病院を運営する福生病院組合(管理者・加藤育男福生市長)を相手取り、慰謝料など2200万円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こした。夫らは「医師らが透析再開を求める意思表示を無視したため、女性は死亡した」などと主張している。
訴状などによると、女性は昨年8月9日、透析用の腕の血管の分路(シャント)が詰まったため病院を受診した。外科医は「首から管(カテーテル)を入れて透析を続ける」「透析治療を中止する」――の二つの選択肢を女性に示した。女性はいったんは治療中止の同意書に署名したが、容体が悪化して入院した後、「こんな苦しいなら透析した方が良い。(治療中止を)撤回する」と病院側に伝えた。しかし病院側は治療を再開せず、女性は16日に亡くなった。
女性が終末期ではなかったことから、夫らは「仮に同意があっても治療中止を提案して実行するのは違法だ」と主張。また女性が「苦しい、苦しい」「もう無理」などと何度も病院側に伝えたことを「明らかに透析再開の意思表示だった」とし、「助けてくれと言ったのに、むごい死に方を強いられた」と訴えている。
この問題を受け、透析医らでつくる日本透析医学会は今年度中に、終末期以外の患者にも治療中止を容認する診療ガイドラインを策定する方針。夫らの代理人弁護士の冠木(かぶき)克彦氏は記者会見で「病院を擁護するような対応だ」と学会を批判した。
福生病院組合の代理人弁護士は「訴状が届いていないのでコメントできません」としている。【熊谷豪】