台風19号の大雨による浸水などで、静岡県東部を中心に農業に大きな被害が出ている。イチゴやトマトの産地、伊豆の国市は16日、15日時点での農作物被害額が施設園芸だけで約7億4000万円に、農業施設被害額が約3200万円に上ると発表した。イチゴの果実や苗が泥につかり、「今から新たな栽培は間に合わない」とクリスマス商戦への出荷を諦める農家も出ている。【垂水友里香、石川宏】
伊豆の国市長崎地区には多くのイチゴ農家があり、香りが良く糖度が高い「紅ほっぺ」や粒が大きく光沢のある「きらぴ香」が特産品。紅ほっぺは今月9日に初出荷されたばかりで、11月から来年6月にかけて徐々に出荷が増えていくはずだった。だが、台風19号の大雨の影響で、狩野川の支流がある一帯は水につかり、多くの農家が被害を受けた。
久保田正一さん(62)のハウスでは、40アールの畑に2万4000株栽培していた紅ほっぺの苗のほとんどが浸水。株が残っていても畝の半分が流されてしまい、今後の栽培への影響が避けられない状況という。苗は先月、家族やアルバイトら約15人で10日かけて植え付けたばかり。損害額は約2000万円に上るとみられ、高額な農機具も水につかった。
久保田さんは自宅も床上浸水した。数日間は水につかった自宅の家財の運び出しに追われ、畑を見に行く余裕もなかった。久保田さんは「台風が1カ月早ければクリスマス商戦に向けて植え替えもできたが、もう苗が手に入らない。生きている株を探してみるが……」と肩を落とす。
JA伊豆の国によると、管内にあるイチゴ農家142軒のうち3割近い39軒が被災。冠水した畑は8ヘクタールに上るという。
年間産出額20%損失
伊豆の国市によると、被害額はイチゴが約3億7900万円(7・94ヘクタール)、トマトが約3億3800万円(15・84ヘクタール)で、ともに年間産出額14億~15億円の約5分の1が失われたという。ハウスなどの施設被害が全壊3件(約2200万円)▽中破6件(約750万円)▽小破7件(約230万円)。田畑の冠水面積や被害額は未集計という。
同市の小野登志子市長は16日の定例記者会見で、「深い所で浸水の深さは2メートルに達した。水がハウスに侵入し、イチゴの高設栽培の棚がアメのように曲がった所もある。農家にとっても、市にとっても大打撃だ」と深刻な表情を見せた。
また、県のまとめでは、他に賀茂地域の花卉(かき)や、西部・志太榛原地域のダイコンなどの露地野菜でも、冠水やビニールハウスの損壊などの被害が出ている。被害が広域にわたっており、県経済産業部は「被害面積や金額は調査中で、全容に近い状況を把握するまでに1カ月ほど必要」としている。