眠りに合わせてベッドが動く “眠りの自動運転”でパラマウントベッドが描くもの

医療や介護用ベッドを手掛けるパラマウントベッドが、一般家庭向け商品を強化している。ブランド名は「Active Sleep」。IoTを前面に打ち出し、“眠りの自動運転”を標榜する。

Active Sleepでは、ユーザーの脈拍数や呼吸数をリアルタイムで分析し、ベッドの傾きやマットレスの硬さを調節する。担当者によると睡眠には、入眠時や熟睡時など、それぞれの段階によって適した体勢があるのだという。例えば、入眠時にはフラットな体勢よりも上半身をやや起こした体勢の方が適している。姿勢を起こすことで呼吸がしやすくなるのだそう。この状態からユーザーの睡眠が深くなるにつれて、フラットな体勢へとベッドが動いていく。動く速度は1分間に1度ほどで、睡眠を妨げないように平坦になっていく。起床時には睡眠が浅くなったタイミングに合わせて、徐々に体を起こしていくように動き、すっきりとした目覚めを実現できるという。

ユーザーの睡眠状況に関する分析は、ベッドのマットレス下に設置された「Active Sleep ANALYZER」で行う。担当者は「分析の精度では他のサービスに負ける気がしない」と胸を張る。睡眠状態は「脳波」で最も正確に測れるとのことで、それと比較した際にも99%以上の合致率だったという。

同社はこれまで医療用や介護用のベッドで成長を続けてきた。一方で、直近の2019年3月期決算を見てみると、同分野での伸び悩みが目立つ。医療施設向け事業では、売り上げが前期比3%の増加。

高齢者施設事業では、売り上げが前期比7%のマイナス成長となっている。16年から21年の期間を対象にした中期経営計画で「新たな成長の芽となる技術の開発とビジネスモデルの創造」と掲げている通り、新たな“稼ぎ頭”が求まれる状況に置かれていた。

そんな中、コンシューマー向け事業が成長を続ける。直近の売り上げは、10億4700万円と前期比28%の成長だ。ベッドの販売台数も、17年3月期から18年3月期にかけて4倍に増えている。「医療介護分野で培った技術で、新たな柱を作りたいと考えていた。特にベッドが動いたときの体への負担や、ずり落ちないようにする技術などには自信がある」と担当者。19年度中に5~6億円規模の売り上げまで伸ばすことを目標にしている。ベッドを販売するだけでなく、ユーザーからデータの取得も行っている。今後はパーソナリティーに合わせたサービスなども出てきそうだ。

さまざまな業種と協業
同社は国内最大級のIT見本市「CEATEC2019」に出展。Active Sleepでの出展は初だが、狙いについて担当者は「協業相手を探す意味合いがある」と話している。実際に、各企業との協業も進む。

航空機の内装品メーカーであるジャムコ(東京都立川市)とは、機内のシートで連携を進める。マットレスの硬さを調整したり、睡眠の質を高めたりすることで長時間の移動中も快適に過ごせるようにする。「移動中には食事するか読書するか、映画を見るか、それか寝るか。こうした選択肢しかない。

エネルギーを消費するのではなく、むしろ蓄積して目的地に着いたときアクティブに動けるように」と担当者は狙いを話す。眠っている人に対してはサービスをせず、起きたタイミングを見計らって案内に行くなど、客室添乗員のオペレーション向上も見込んでいるという。現在は実験中とのことで、数年かけて実用化を目指す。

IoT機器を手掛けるリンクジャパン(東京都港区)との連携では、「寝室のアップデート」を狙う。CEATECでは、ベッドと連携して就寝時にテレビを消したり、起床時にはカーテンを自動的に開いたりする“未来の寝室”のデモを行った。こちらは既に実用化のめどが立っており、数カ月後には正式に発表されるという。

国際的に見ても睡眠時間が短いとされる日本。睡眠時間を長くすることも重要だが、今後はこうした睡眠の「質」にも注目する必要がありそうだ。