「バブル」と言われ、右肩上がりのグラフを描いている中国の映画業界。もちろん、映画に限らず、成長著しい中国には世界各国のエンターテインメントが続々と輸入されている。なかでも近年では、ミュージカルの勢いが止まらない。
他国に比較してまだミュージカルの観劇人口は少ないものの、2017年には前年比2倍となる3.5億元(約58億円)の興行収入を記録。まだまだ伸びしろのあるオイシイ市場を開拓しようと、17年から、劇団四季ではオリジナルミュージカル『魔法をすてたマジョリン』や『人間になりたがった猫』を中国の企業にライセンス販売し、中国事業に本格進出を遂げた。
また、オタク女子を中心に爆発的な人気を誇っている2.5次元ミュージカルも中国に進出。日本のマンガ人気を背景に、2015年以降、『テニスの王子様』『刀剣乱舞』『黒執事』『美少女戦士セーラームーン』といった作品の数々が輸出されており、17年からは、2.5次元ミュージカルの中国公演用劇場として上海にある「虹橋芸術センター」を使用。現地のファンのみならず、わざわざ日本から足を運ぶ腐女子たちも多い。
だが、映画と同様、もちろん演劇も検閲制度と無関係ではなく、事前に脚本とビデオの提出を求められるほか、公演中に突然検閲官が劇場を訪れて違反がないかを確認する。
日本のミュージカル作品ではまだ検閲問題は表面化していないが、同性愛をテーマとしたブロードウェイミュージカル『スリル・ミー』の上海公演では、作品のキモとなる男同士のキスシーンはカットされた。また、昨年には、ドイツを代表する劇団「シャウビューネ」による環境問題をテーマとした演劇公演が検閲によって上演中止の事態に陥ってしまった……。
映画に限らず、中国でカルチャービジネスを円滑に進めていくためには、検閲制度に対しても十分な理解が必要になるのだ。
――外国映画にも容赦なく適応される中国当局による検閲制度。では、どのような作品たちが検閲の壁に阻まれたのだろうか? ここでは、検閲によって修正や上映禁止の憂き目にあった外国作品を紹介しよう。
同性愛シーンは全カット!
【1】『ボヘミアン・ラプソディ』 フレディ・マーキュリーを主人公にし、日本国内だけで127億円、全世界で9億ドルの興行収入を叩き出した『ボヘミアン・ラプソディ』は、中国でも2019年に公開。しかし、1997年まで同性愛が犯罪とされ、現在も根深い差別意識が残っている中国では、男同士のキスシーンや、フレディが婚約者に自らのセクシャリティをカミングアウトするシーンなど、同性愛に関わる描写はすべてカットされている。また、性的過ぎるからか、フレディの股間がクローズアップされるシーンも削除されてしまった……。
中国に媚びても効果なし!!
【2】『ゴーストバスターズ』 80年代に大ヒットした映画『ゴーストバスターズ』のリブート版。ニューヨークのチャイニーズレストラン2階に事務所を構えているという設定や、メンバーのひとりがワンタンスープが大好きといった中国の観客に対するサービスが随所に盛り込まれていたものの、検閲によって公開はNGに……。中国では現代を舞台にした映画において迷信やオカルトを描くことは認められず、そもそも80年代に公開された初代『ゴーストバスターズ』もなじみが薄いことなどが、検閲を通過できなかった理由といわれている。
国家主席が大激怒!?
【3】『プーと大人になった僕』 ユアン・マクレガー主演による「くまのプーさん」の実写版となるこの作品も、中国では公開されなかった。実は、この理由、「習近平とプーさんが似ているから」と囁かれている……。13年、当時のオバマ大統領と習近平国家主席が歩く様子が、プーさんとティガーが並んで歩く様子に似ているというネタ画像が投稿され、中国国内で大ブームに。以降、中国ではプーさんが政治的反抗の象徴となり、SNS上でも、プーさんの画像投稿は禁止されているのだ。もちろん、作品内に検閲に抵触しそうな描写は一切ない。
1度はOKだったのに……
【4】『進撃の巨人 紅蓮の弓矢』 中国の動画サイトで4億回以上の再生回数を誇る人気作品『進撃の巨人』。この劇場版となる『紅蓮の弓矢』は、2015年の上海国際映画祭「日本映画週間」での上映が予定されていたものの、前日に急遽上映中止が言い渡された。事前検閲こそ通過していたものの、映画祭直前に中国文化省が同作を含む日本のアニメ38作品を「未成年者の犯罪や暴力、ポルノ、テロ活動を煽る内容が含まれる」としてインターネットでの配信を禁止。映画の上映も、この煽りを受けてしまったようだ……。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)