台風19号で阿武隈川などが氾濫し、浸水被害が相次いだ福島県伊達市に、損壊した自宅兼店舗で台風通過の翌日から営業を続ける商店がある。「店を閉めると困る人がいる」。店主の高橋善伴さん(76)は、避難先から毎日通って店を開け、被災者を支えている。
同市霊山町にある「高橋商店」の創業は約150年前で、高橋さんは4代目。食料品や生活雑貨を販売し、高齢者が多い地区でプロパンガスなどの配達も手掛けてきた。
台風が接近した12日の午後11時半ごろ、店舗を兼ねる自宅に「ガラガラ」と大きな音が響き渡った。「家が崩れたのか?」。就寝中だった高橋さんは飛び起きた。急いで妻と同居の息子夫婦を起こし、大雨が降る中、近くの集会所に避難した。
翌朝、様子を見に行くと、住宅部分のキッチンや風呂、茶の間が流失していた。真横を流れる小国川の増水で、建物は土台部分から大きくえぐり取られており、高橋さんは「言葉が出てこなかった」と振り返る。
だが、営業はやめなかった。「店舗部分は残っていたし、店を閉めると困る人がいるから」と高橋さんは笑う。近隣に商店はなく、営業を休止すれば住民の生活に影響を与えると考えた。
21日に店を訪れた同市の女性会社員(64)は「ここが閉まるとお年寄りは困る。営業してくれてありがたい」と話す。店は買い物ついでに世間話をする「情報交差点」としても重要な場だという。
高橋さんは現在、市内の友人宅に身を寄せながら、日中は車で店に戻る毎日だ。自宅再建の見通しは立たないが、「有事だからこそ店は平常通りに」と語った。