疲れて座り込む人、携帯電話の画面をのぞき込む人――。成田空港(千葉県成田市)は、東京都内などを結ぶ鉄道が運転を一時見合わせ、高速バスも一時運休し、空港の到着ロビーや駅は大勢の人であふれた。
JR東日本は千葉―成田空港駅間で線路が冠水し、25日午後1時40分ごろから6時間半にわたって運転を見合わせた。特急の成田エクスプレスは同時刻から全便を運休。「大雨のため運転を見合わせています」。成田空港駅ではアナウンスが繰り返し流れた。
京成電鉄も一部運休し、外国人観光客らは困惑した表情で係員に状況を聞いていた。「早く帰りたい」。中国・広州から到着した東京都渋谷区の旅行会社経営、孫磊(そんらい)さん(40)は高速バスを約4時間待ったが乗れず、京成の駅で再び長い行列に並んでいた。
航空便も欠航や目的地変更が相次いだ。着陸予定の航空機30便が羽田空港などに目的地を変更。国内線の成田行きの便は午後2時20分から約3時間出発を停止し、国際線も一部制限された。強風で着陸できない便もあった。成田空港では9月の台風15号でも周辺の交通機関がストップし、約1万6900人が足止めされた。
JR千葉駅でも運休が相次ぎ、足止めされた帰宅客らで混雑した。利用可能な路線でも入場が規制され、数時間並ぶ利用客もいた。周辺ホテルの多くが満室になり、バスの停留所やタクシー乗り場にも長蛇の列ができた。
友人4人での熱海旅行の帰りに混雑に巻き込まれた若林栄子さん(69)は、仕方なく改札前の壁際に新聞を敷いて一晩を明かそうとしていた。家族に車で迎えに来てもらおうとしたが、交通規制のためたどり着けないと言われた。周辺のホテルも満室。「雨が降るとは聞いていたが、まさかこんなことになるとは想像もしなかった。今日は帰れないとあきらめた」と肩を落とした。【中村宰和、加藤昌平】
生徒や児童、帰宅できず
千葉県教育委員会は25日、県立高校の生徒8人が大雨による交通機関の乱れのため帰宅できず、校内に宿泊すると明らかにした。また、千葉県山武市立日向小学校では周囲の道路が冠水し、児童らが帰宅できない状態になったという。【宮本翔平】