毎日新聞朝刊科学面(原則毎週木曜日掲載)の長期連載「幻の科学技術立国」を再構成・加筆した単行本「誰が科学を殺すのか 科学技術立国『崩壊』の衝撃」(毎日新聞出版、税別1500円)が、28日に発売される。日本の研究力衰退の現状とその背景に多角的な取材で迫り、再生への処方箋を探る一冊になっている。
この10年の間に科学技術分野の論文数が先進国で唯一減少するなど、さまざまな指標から日本の研究力衰退が指摘されている。かつて「ものづくり」で戦後の高度経済成長をけん引した企業も、巨大IT企業の出現による社会変革の波に乗れず、勢いを失っている。
「幻の科学技術立国」は、2018年4月から19年5月にかけて4部構成で随時連載された。困窮を極める地方大学や企業の研究開発の衰退の実態をリポート。内閣府主導の大型研究プロジェクトで起きた「やらせ公募」をスクープするなど、政府が推し進めてきた公的研究費の「選択と集中」がもたらす弊害を詳報した。
また、近年の科学技術政策の歴史をたどり、度重なる改革がさまざまなひずみを生んだ背景を分析。米国をもしのぐ成長を見せる中国をはじめ、海外の最新の動きも紹介した。
単行本では、連載に加筆するとともに、前後の関連報道の内容も豊富に盛り込んだ。本の帯には、山極寿一・京都大学長が「日本の学術に輝きを取り戻す必読の書」とのメッセージを寄せている。