台風でイベントが中止になったら、参加者はどうすればいいの? 「COMIC CITY SPARK14」振替対応、赤ブーと弁護士に聞いた

台風19号の影響で、10月13日に開催予定だった同人誌即売会「COMIC CITY SPARK 14」が中止となり、主催者が発表した振り替え対応がネット上で賛否両論を呼んでいます。台風や地震などの天災と隣り合わせの日本で、イベントやライブの中止は避けては通れないもの。こうした時、参加者はどうすればいいのでしょうか。

●台風29号によって、大規模イベントが中止に

「COMIC CITY SPARK 14」(通称スパーク)は赤ブーブー通信社が主催する同人誌即売会で、主に女性向けの作品が取り扱われるイベントです。会場は東京ビッグサイト、日程は2日間、参加サークルは約1万1000サークルと、同様のイベントの中でも大規模なことで知られています。

本来、10月13日と14日で開催されるはずだった「COMIC CITY SPARK 14」ですが、台風19号の上陸に伴い、主催の赤ブーブー通信社は日程1日目・13日のイベントを中止することを決定しました。

●賛否両論を呼んだ中止対応

同人誌即売会は、サークル参加者が自身のスペース代=参加料を主催に支払い、イベント当日に同人誌を頒布する仕組みです。

今回の「COMIC CITY SPARK 14」の中止対応の第1報が出たのは、10月15日。参加者に対して、スペース代を返金しないことと、振替イベントの開催、振替エントリーコードを発行することが発表されました。

赤ブーブー通信社は、この「返金をしない」という対応について、サークル参加者向けの「参加要項」に書かれている「主催者は、天災等の不可抗力によりイベントの開催を中止する場合があります。この場合の既納金(オンライン手数料を含む)はお返しできません」という項目を理由としていました。しかし、それに対し、ネット上では「返金が妥当」「消費者契約法違反なのでは」といった意見が挙がり、さまざまな議論がなされました。

一方で、返金はされないものの、11月30日に「COMIC CITY SPARK14 Day3」と銘打ったイベントの開催を急きょ決定し、中止により参加できなかったサークルを優先して受け付けるほか、赤ブーブー通信社主催のイベントに振替参加ができるエントリーコードの発行が同時に発表され、これについては「神対応」「真摯に対策してくれている」という意見も少なからず見られたのも事実です。

イベント終了から約1週間たった10月22日、上記の対応に加え「振替コードと同等の郵便為替受領」が追加されました。これは、振替エントリーコードの使用期限である2020年9月30日までに、赤ブーブー通信社主催のイベントに参加する予定のないサークル向けの対応と発表されています。

今回の中止対応について、ねとらぼ編集部では赤ブーブー通信社に電話取材を行いました。

●――「COMIC CITY SPARK14」13日Day1の中止に関して、振替などの対応を決めた経緯をあらためて教えてください。

公式twitterやサイトで発表されているものが全てですが、参加要項に基づいて対応を決めました。赤ブーブー通信社では、サークル代の返金はないと一貫してご案内しています。振替対応については、イベントの規模の大きさを加味して決定しました。イベントのために作品を準備していた参加者の方に、再びイベントに参加してほしいという気持ちから、このような対応になりました。

●――2011年の東日本大震災で中止になったイベントでは返金対応をしています。参加要項の「天災に関しては返金を行わない」という項目はいつごろ追加されたものですか。

2011年の震災の後に要項を見直して追加されたものです。顧問弁護士などと協議の上でできた項目です。

●――ネット上で、一連の対応が賛否両論となっていますが、そういった意見については把握していますか。

直接、電話やメールなどでご意見をいただいています。振替対応などもそれを受けて決定しました。郵便為替に関しては、オンライン環境がなく、振替コードを使用できない人の声を受けて決定したもので、参加要項通り、返金ではなく、あくまでも振替の対応です。

●他のイベントで同様のことが起こった場合は?

今回の「COMIC CITY SPARK14」の中止はこのような対応がなされましたが、天災によるイベントの中止は、同人誌即売会だけでなく、さまざまなイベントで起こるものです。このような場合、参加者は振替や返金などの対応を求めることはできるのでしょうか。

ねとらぼ編集部では、グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に今回の事案について見解を聞きました。

●――イベントの参加要項に「天災による中止の場合も返金しない」と明記されている場合、消費者契約法に反するという指摘があります。こうした場合、主催の規約と法律ではどちらが優先されるのでしょうか。

私たちの一般的な私生活に関する法律関係については、私たちの意思によって決めることができるという考え方をとっています。そのため、契約をするのかしないのか、するとしたら誰とどのような内容・方法でするのかといったことについて自由に決めることができます(契約自由の原則)。

今回の「COMIC CITY SPARK14」のケースですと、サークル参加者は「天災等の不可抗力によりイベントの開催を中止する場合、既納金を返さない」という内容についても納得した上で、参加の申込みをして契約した以上、返金が認められないのが原則です。

ただ、何が何でも契約自由だということを認めてしまうと、持ち合わせる情報の量・質、交渉力に劣る消費者にとって不利益が大きくなります。そこで「消費者契約法」によって、一定の制約を加えています。

この消費者契約法では、消費者の利益を一方的に害する条項について無効とすることで、消費者を保護しようとしています(消費者契約法10条)。これにより、民法などの一般的な規定によって判断される結果と比べ、契約条項によって判断される結果が権利を制限していたり、義務を重くしたりしている場合に、事業者の不利益と消費者の不利益とを比較して、消費者の不利益の方が信義や誠実に照らして大きいといえる時は、契約条項の効力を否定し、消費者を保護することが可能です。

台風という自然災害によってイベントが開催できず中止となった場合、民法の規定によると、主催者は参加者から参加料をもらえず、既にもらっているお金は参加者に返すことになります。この結果と比べると、契約条項によって、既納金を一切返さないとすることは、参加者のお金を返せという権利を制限していると考えることができます。そして、参加者はお金を返してもらえないという不利益を受けています。

一方、主催者としても、イベントにあたって会場や人の準備にかかった費用を回収できないという不利益があります。この両者の不利益を比べたとき、一部返金なども受けられないという場合は、参加者の不利益の方が大きいと言えます。そのため、既納金を一切返さないという規定は、消費者契約法10条によって無効とされ、法律の規定が優先されると考えられます。

●――中止に伴って、振替イベントの開催や、別のイベントに振替できるコードを発行するなどの対応がなされた場合は、参加者は返金を求めることができるのでしょうか。

主催者がそのような対策を取った場合、参加者の不利益の方が大きいとはいえない可能性があります。この場合、たとえ返金がないとしても、それに代わる措置をとることで、消費者の利益を一方的に害するとは言い難いからです。

このようなケースだと、参加者は返金を求めることができない場合もあります。

●――もし、天災などの不可抗力でイベントが中止になり、主催者が振替も返金といった対応を一切行わない場合、参加者はどのような手段をとればいいのでしょうか。

参加者は、主催者に参加料やチケット代の返金の連絡をして、主催者と話し合いを進めることになります。その際は、後で言った言わないといった紛争を避けるために、書面でのやりとりをおすすめします。