在日ロヒンギャ、群馬でサッカーチーム結成 郷里の平和願い、名称「サラマットFC」に

ミャンマーで迫害を受ける少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」が日本国内で最も多く暮らす群馬県館林市でサッカーチームを結成した。チーム名は「サラマット(日本語で「平和」の意味)FC」。県内在住のミャンマー人を含めたさまざまな民族のチームと試合を通じて交流し、相互理解を深め、郷里の平和を願っている。【妹尾直道】
チームを作ったのは在日ロヒンギャ2世で高校1年の水野守さん(16)(ロヒンギャ名・スハイル)。2017年8月にミャンマー西部ラカイン州での政府側の掃討作戦で約70万人以上のロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに逃れる中、「サッカーでみんなを盛り上げたかった」と同年11月にチームを創設した。
チームは在日ロヒンギャや日本人など10~20代の約20人で構成。週1回程度練習し、在日ベトナム人などさまざまなチームと試合を重ねてきた。
「マーク!」「裏を狙え!」。真剣な声が飛び交う邑楽町内のグラウンド。チームは今月6日、ミャンマー人チームと対戦した。これまでも複数回対戦しており、水野さんは「いろいろなことをアドバイスしてくれて、『兄』のようにサポートしてくれる人たちだ」と話す。
県内での交流とは裏腹に、仏教徒が多数を占めるミャンマー国内世論はロヒンギャに冷淡だ。軍事政権下で「不法移民」として国籍が与えられず、現在も十分な権利や自由が保障されていない。
「同じ国で生まれてきたのに争っている場合ではない」。ミャンマー人チームの代表を務めるヤンゴン出身のチョーエイカインさん(38)=群馬県大泉町=は訴える。自身も在日ロヒンギャの知人から仕事を紹介してもらうなど助け合いながら生活してきた。「ロヒンギャの状況は心が痛む。ミャンマーでもこういうふうに交流してほしい」と語る。
今後も在日コリアンとの試合などが決まっている。水野さんは「異文化の人と交流するのは良いこと。試合を通じてロヒンギャの状況を伝えたい」と話す。将来は、バングラデシュの難民キャンプなど世界各国に散らばるロヒンギャチームとの対戦を夢見て、きょうもピッチへと繰り出す。