急いでいるのにタクシーが停まらない―。たしかに「空車」表示がみえるのに、目の前を通り過ぎてしまった…。あなたにも、そんな経験がないだろうか。
なぜ通り過ぎてしまうのだろうか。全国のタクシー事業者をまとめる、一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会(以下全タク連)の広報担当者は、タクシー運転手が停まることができない「事情」を明かした。
終電を逃してしまい路上で手をあげ乗車し帰宅。あるいは急いでいる時、疲れている時など…。とっさにタクシーに乗りたくなった場合、「空車」表示を探して手を挙げる。停まってくれればいいものの、ツイッター上には、
と、8月中につぶやかれた怒りの声は枚挙にいとまがない。なぜ停まらないのか。
全タク連の広報担当者は「(運転手が)気がつかない場合や車線変更が難しい場合など」もあると話す。時と場合、状況によっても、さまざまで
と、「空車」表示をしていても、停まることができないケースもあると話す。
加えて、客が手を挙げた場所が、タクシー運転手の営業区域「外」であった可能性も否定できないという。
タクシー業には、道路運送法施行規則第5条に基づき、各都道府県・地域の運輸局長が定める「営業区域」というものがある。タクシーの発着(乗車/降車)は「営業区域『内』」で行うのが原則である。
たとえば東京都は「(1)特別区(23区)/武三交通圏」「(2)北多摩交通圏」「(3)南多摩交通圏」「(4)西多摩交通圏」「(5)島地区」に「営業区域」が分かれる。仮にタクシー運転手が「特別区/武三交通圏」担当で、23区を周回中に客を乗車させたとする。行先は「埼玉県」だ。これは乗車地点が「営業区域『内』」であるため、法に抵触しない。道路運送法第20条に、
とあるためだ。つまり乗車/降車地点が担当の「営業区域『内』」でなければならない。それゆえ、タクシー運転手は「埼玉県」で客を降車させた後、つづけて客を乗せるとき行先が「埼玉県」内であってはいけないのだ。
全タク連広報担当者は、手を挙げた場所が営業区域外だった可能性は否定できないとする。タクシー事業者によっては「回送」表記にすることもあるそうが、ルールは地域性や会社のルールによって異なるという。そのため「空車」表記のまま、営業区域内に戻る運転手もいる。トラブル回避のために、タクシー事業者は運転手に対して区域外なら客に説明してもらうなどの指導を行っているという。
(J-CASTニュース編集部 井上祐亮)