世の中にはいろいろなアルバイトがありますが、とりわけ若者たちに人気なのが観光地で働く「リゾートバイト」です。今の生活をいったんリセットして、北海道から沖縄まで全国各地のリゾート地にひとりで行き、初対面の人たちと一緒に仕事をする。なんとも気ままなライフスタイルです。
知らない土地にひとりぼっちで危ないのでは?と思うかもしれませんが、むしろ好きな場所に行けて、新しい友達も作れるなどメリットづくめだとか。今回はそんなリゾートバイトにどっぷりつかった女性に、その魅力を聞きました。
都内の大学在学中からリゾートバイトを始め、一時就職するも、再びリゾートバイトの世界に舞い戻った西田舞香さん(仮名、26歳)。「リゾートバイトで全国を渡り歩いて、さまざまな経験をしてきた」と語ります。
「大学3年生のとき、最初に働いたのは長野県北志賀竜王のスキー場のレンタルショップでした。リゾートバイト経験がある友人の紹介でしたが、あまり良い職場ではありませんでした。時給1000円で1日3時間しか働けず、ほとんど稼げなかった。おまけに人手が足りていると、一方的に休みにされることもありました」
1日の収入が3000円。おまけに生活費は自己負担で、宿泊先の食事代と入浴料が1日1500円もかかったそうです。
「とはいえ、暇なときには、バイトの学生とスノボで遊べたので楽しかったです。3カ月間で5万円程度しか稼げなかったので、リゾートバイトは儲けたい人には微妙ですね」
かなりブラックな職場環境にも聞こえますが、西田さんは「友だちも増えて、楽しかった」と、あっけらかん。リゾートバイトにのめり込み、全国を転々としたそうです。
「大学4年の夏休みは沖縄県石垣島の飲食店でした。電話だけの面接でしたが、人手が足りていなかったそうで、すぐに採用が決まりました。2~3日後、自分で航空券を買って島に向かいました。『交通費は後で渡す』と言われていたので、実際に会うまで詐欺なんじゃないか、バックレられないかとヒヤヒヤでした(笑)」
無事に現地でスタッフに合流すると、すぐに島の人たちと仲良くなりました。「狭い島だったので、遊び関係は全部コネ。ホテルのプライベートビーチでタダで遊ばせてもらうこともありました」。
石垣島では1カ月半で10万円の収入。なかなかの稼ぎを得られたそうで、大学4年の冬には新潟県越後湯沢のスキー場で働きます。
「ここでは2カ月働きました。日給3000円(生活費込み)ですし、リゾートバイトで生計を立てているというプロのスノーボーダーの方とも知り合えました。”冬の籠もり仲間”を見つけるためにスキー場のリゾートバイトをやっていたようなものです(笑)」
北志賀竜王で働いていた頃。リフト代は無料なことが多い(本人提供)
西田さんは大学卒業後、大手通信会社の子会社に就職。2年10カ月、正社員として営業スタッフの仕事を続けます。しかし、スノボへの情熱が冷めやらず、2018年末に退社を決心しました。
「今度はスキー場といってもゲレンデスタッフではなく、時給の良いリゾキャバ嬢(リゾートキャバクラ嬢)として働こうと思い、関東の某スキー場の駅前にあるスナック全店舗に直接電話して交渉しました」
最初のうちは断られるも、彼女の情熱が伝わったのか最後の1件が受け入れてくれることに。
「ゲレンデのそばの1LDKのリゾートマンションに住み込むことになりました。別荘用のマンションなので、最上階は巨大な共有浴場、内装もかなり豪華でした」
そんななか、西田さんには勤務先のスナックで印象に残った出会いがあったそうです。それは、リゾートキャバ嬢の先輩です。
「50歳前後の高島礼子似の美熟女で、もともとリゾートキャバ嬢だったのが、完全移住したケースです。地元の住民と一緒にスーパーに寄って朝食やタバコを買って、そのまま同伴で出勤してくるほど完全に溶け込んでいるんです。ああなれたら理想かもしれませんね」
こうした出会いを通してリゾートバイトへの理解を深めていった西田さん。リゾートバイトをうまく続けるためのコツを聞くと「神経質にならず、こちらから懐に飛び込むこと」ときっぱり。
「いかに地元住民に溶け込むかが大事で、『その街のいいところは?』『地元のおすすめの食べ物は?』など地元について聞くのがおすすめ。それで、紹介されたお店には必ず行ってください。勧めてくれたお客さんの名前を出して『◯◯さんの紹介なんです』と言えば、どちらとも仲良くなれます」
スナックで働いていた頃。働く女性同士の仲は良いそう(本人提供)
今年の6月、東京に舞い戻ったという西田さん、今度は海外のキャバクラで働くもりだそうです。タイやシンガポール、アメリカや香港などには日本人向けのキャバクラがあり、1回の滞在で数百万円を稼ぐ人もいるとか。
「ニューヨークの日本人向けキャバクラで働くつもりです。面接は、仲介サイトで気になったお店のスカウトマンとLINEでつながって、プロフィールと加工なしの顔と全身の画像を送るだけ。合格すると、契約内容や寮の場所、お店の場所を教えてくれます。現地の語学学校にも通う予定なので、語学力アップも期待しています(笑)」
最後にリゾートバイトをなぜ続けるのかを聞くと、次のように話してくれました。
「リゾートバイトって基本、ひとりで飛び込むもの。最初は不安ですが、懐に飛び込めば、全国各地に友達ができます。それに、観光旅行ではわからない、その土地の良さや、そこでしか食べられない名産品を紹介してもらえるので、故郷が増えたような気分にもなれます」
正社員という立場を捨ててリゾートバイトに身を捧げた彼女。世間一般が考える安定とはほど遠いかもしれませんが、様々な土地に知り合いを作って、気ままに生活を送っている表情には、サラリーマンにはない楽しさが表れていました。