河野防衛相、嘉手納のパラシュート降下訓練の中止要請…米軍は強行 「大変遺憾だ」

河野太郎防衛相は29日午前の記者会見で、在日米軍が嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)で計画するパラシュート降下訓練の中止を米側に要請したと明らかにした。降下訓練は地元の負担軽減のため、同県伊江村の伊江島で実施することで日米両政府が合意している。だが、在日米軍は29日夜、嘉手納での訓練を強行。河野氏は同日夜、防衛省で記者団に「(日米)同盟に影響を与えかねない、大変遺憾な出来事だ」と述べた。
防衛省によると、28日に米軍から、悪天候を理由に降下訓練を29日に嘉手納基地で行うと通知があった。河野氏は記者会見で「嘉手納で降下訓練が行われるのは明らかに(日米の)合意に反し、受け入れられない」と表明。「地元理解は同盟を維持強化していく上で最も基本的なことだ」と述べた。政府は在日米軍司令官や米大使館などに中止を申し入れた。だが、嘉手納基地では29日午後6時40分ごろから、真っ暗な夜空の中を米軍機からパラシュートを広げた複数の兵士が降りてくるのが繰り返し確認できた。これに先立って伊江島でも降下訓練が実施され、兵士2人が誤って訓練区域外に着地した。
日米両政府が1996年に合意した日米特別行動委員会(SACO)最終報告では、読谷補助飛行場(同県読谷村)で行われていた降下訓練について「伊江島補助飛行場に移転する」と明記した。訓練では基地外に落下するケースも頻発し、65年には読谷村で民家近くに落下したトレーラーの下敷きになった女児が死亡する事故も起きていた。
嘉手納での訓練は「例外的」とされたが、米側は伊江島周辺で波が高いと海面に着水した時の救助が困難などとして、嘉手納で訓練を繰り返した。県によると、最終報告以降、米軍が嘉手納基地でパラシュート降下訓練を実施したのは13回目。最近では2017年に3回行い、今年は4回目となる。県幹部は「地元自治体や県だけでなく、防衛相も中止を求めているというのに、強行するとは。日米安保体制って何なのか」と絶句した。県は30日に防衛省沖縄防衛局長らを県庁に呼び、訓練強行に抗議する。【田辺佑介、遠藤孝康】