格調高く、スケールの大きな芸風の能楽・和泉流狂言師で人間国宝の野村萬さん(89)。文化勲章を「感謝、感激。それ以外に言葉はございません」と喜ぶ。卒寿を前に指針にするのは能作者、世阿弥の言葉「老い木に花の咲かんがごとし」。「少な少なの花だけれど、味わいのある花を舞台に咲かせていきたい」と、なお前を向く。
幼少期から跡継ぎとして厳しい稽古を受けてきたが、狂言の魅力は「健康な明るさ。素朴であったり単純であったりすることの強さ」という。代表的な登場人物、太郎冠者は主に仕える従者だが、「いざとなったら下克上で取って代わるぐらいのエネルギーがある」。
日本芸能実演家団体協議会の会長職に就いて22年。「その太郎冠者のような心で団体を引っ張っていきたい」と意欲は衰えない。