12日に列島を縦断した台風19号などによる被害で、長野や福島、千葉などを走る鉄道14路線の運休が続いている。多くは全面再開の日取りが未定で、バスによる代替輸送は時間がかかるため、通学利用の高校生らは「早く再開して」と切望する。一方、東日本大震災から8年ぶりに今春、不通区間が再開したばかりの岩手・三陸鉄道リアス線では7割の区間が運休しており、沿線住民は「またか」と嘆いた。【鬼山親芳、玉井滉大】
早起きして対策 渋滞でバス時刻表用意できず
「被害が出る前は30分で通学できたが、今は道路が渋滞すると1時間ぐらいかかるので、早起きしないと間に合わない」
栃木市内の線路が増水で流されるなどしたため、一部区間が不通になっているJR両毛線。代替バスの発着点、栃木駅のロータリーで30日朝、栃木県佐野市の高校2年生、関塚萌恵(もえ)さん(16)が「早く復旧してほしい」と言った。ロータリーには代替バスを待つ乗客の列ができ、高校生の姿が目立つ。
JR東によると、両毛線は台風19号で栃木市を流れる永野川が増水するなどし、足利―栃木間の14カ所で盛り土が流されたり線路上に土砂が流入したりする被害が出た。現在、復旧作業を進めているが、被害が大きかった栃木―岩舟間で運行が再開できない状況だ。
代替バスの輸送は佐野―栃木間の約16キロで行われているが、被災地では渋滞が起きている。確保できるバスの台数も日によって異なるため、時刻表は用意できていない。
震災から復旧、黒字見通しだったのに…
「住民にとって8年ぶりのレールの音。列車はバスに比べて運行が正確でゆったり座れる」。そう喜んだのもつかの間の被害に、岩手県山田町織笠の元宮大工、稲川茂作さん(84)が「またか」と落胆した。
NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で有名になった、岩手県沿岸を走る第三セクターの三陸鉄道。東日本大震災の被害から今春、8年ぶりに復旧した区間を含め、地盤の流出や線路上への土砂の流入などで77カ所が被災した。全長163キロのうち約7割の区間で運行できない状態が続く。
不通になっているのは、田老―久慈と釜石―宮古の計2区間、約114キロ。不通区間はバスで代替輸送している。
三鉄は3月、震災からの復旧工事を終えた宮古―釜石間をJRから移管され、県沿岸部を縦断するように久慈から盛までがつながった。利用者が増え、今年度決算の黒字見通しを発表した直後の台風被害だった。「今年度中には全線復旧させたい」。三鉄の担当者が話した。
一部区間運休、7事業者14路線
国土交通省によると、台風19号の影響により一部区間で運休しているのは30日現在、6事業者12路線で、21号などによる大雨の影響も含めると計7事業者14路線に上る。
このうち、来月1日に全線開通が見込まれているのはJR小海線と久留里線の2路線で、水郡線は一部区間で再開される。磐越東線などは11月中の復旧が見込まれているが、多くが全線再開まで長期を要する見通しだ。
運休区間では現在、バスによる代替輸送が続いている。しかし、国の補助制度はなく、運行経費は各鉄道会社が負担している。このため、中小の鉄道会社からは国からの財政支援を求める声が出ており、赤羽一嘉国交相は30日の衆院国土交通委員会で前向きに検討する考えを示した。
国交省の担当者は「経営環境が厳しい鉄道事業者の負担を軽減できるような方策を検討している」としている。【松本惇】