台風21号の影響による大雨で行方不明となり、29日に死亡が確認された千葉県茂原市の女性(53)について、県は発表の訂正を繰り返した。26日に一度は行方不明者として発表したものの取り下げ、27日に再び行方不明者として発表。県は市の情報を基にしたと説明するが、県警と消防による捜索が26日に始まったのに対し、県が自衛隊に捜索を要請したのは再び行方不明者とみなすようになった27日になってからだった。
県によると、県は26日、茂原市で女性が行方不明になっていると報道で知り、同市に確認後、26日午前9時に行方不明者として発表した。その3時間後、「市から『情報は通報だけで行方不明であることも含めて市が調査中』として要請があった」として取り消した。だが27日午後3時、県は「市から『警察に(行方不明者であるとの)情報を確認した』と県に連絡があった」とし、再び行方不明者として発表した。
一方、県警によると、25日午後に「女性が川に流された」などと目撃者から110番が相次ぎ、同日中に女性が行方不明となったと家族から県警に届け出があったという。県は市の情報を基に訂正を繰り返したが、県警に確認することはなかった。
県災害対策本部は取材に「問題がなかったとは思わない」とコメント。自衛隊への捜索の要請が遅れた可能性を問われ、「確認したい」と答えた。【宮本翔平】
神奈川は県が情報を一元管理する方針
神奈川県は29日、災害時の死者や行方不明者の氏名などの情報について、今後は県が集約する方針を明らかにした。収集した氏名などの公表の可否は、市町村が確認する家族など関係者の意向に応じる。県はこれまでの災害で、市町村から死者や行方不明者の数、性別などの情報は聞き取っていたが、氏名などの個人情報の提供は求めていなかった。
今月12日に関東を通過した台風19号では、県内でも死者14人、行方不明者3人が出た。県は現時点で死者の氏名を公表していないが、全国的には発表した自治体もあり、県は被災者の個人情報の取り扱いについて検討を開始。今後は県が対策本部を設置する程度の災害が発生した場合、県警や市町村から情報提供を受け「一元的に集約する」(花田忠雄・県くらし安全防災局長)ことを決めた。
台風19号による被災者の情報を巡っては、県警の古谷洋一本部長が今月17日の定例記者会見で「災害対策本部は県でつくるので、被災者の氏名公表はそちらの判断に従う」と述べている。台風19号の被害でも、県に情報を提供したとの認識を示した。
しかし、翌18日にあった黒岩祐治知事の定例記者会見で、県の担当者は「県警からは頂戴しておりません」と発言。県警と県の主張に食い違いが生じていた。
県は29日、この点について「県の災害対策本部に詰める県警の担当者から随時、情報の提供があった」と訂正。花田局長は「(対策本部の中で)情報連携がうまくいっていなかった」と釈明した。
県の説明によると、県警からの情報伝達が具体的にどのように行われたかなどは確認できなかった。情報を受けた側のメモなども残っていないという。ただ、聞き取りに対して、対策本部で情報共有に使うホワイトボードに「個人情報が書いてあるのを見た」などと話す職員が2人いたことから、県警からの情報提供はあったと判断したという。【樋口淳也】