ベトナム人実習生と被害者夫婦の接点は…茨城の殺傷事件

茨城県八千代町平塚の民家で起きた夫婦殺傷事件で、殺人未遂容疑で逮捕されたベトナム国籍の農業実習生、グエン・ディン・ハイ容疑者(21)は、現場の民家から約2キロの距離に位置する寮に住み、昨年秋から実習生として農作物の栽培などに取り組んでいた。夫婦と容疑者に何らかの接点はあったのか。事件の全容は判然とせず、静かな農村にはなお不安がくすぶっている。
ハイ容疑者は3日午前、水戸地検への送検のため下妻署を出た。捜査員に挟まれ車両の後部座席に腰掛けたハイ容疑者は、終始うつむいた状態のままだった。
これまでの調べに対しハイ容疑者は、逮捕の決め手となった事件前日の包丁購入については認める一方、大里功さん(76)殺害への関与や、重傷を負った妻の裕子さん(73)に対する殺人未遂容疑は否認している。
のどかな集落を震撼(しんかん)させた事件は、容疑者の逮捕・送検によって一応の節目を迎えたが、近隣住民の間に広がった動揺は完全に鎮まったとはいえない。
「子供たちが安心して学校に行ったり遊んだりできるようになってよかった」
近くに住む70代の女性はこう胸をなで下ろす一方で「この辺りはのんびりしていて、鍵をかけない家も多かったが、事件をきっかけにかけるようになった」と明かす。
実際、大里さん方も8月24日未明の事件当時、一部の扉が無施錠だった。茨城県警は、ハイ容疑者が無施錠の部分から屋内に侵入し夫婦を襲ったとみている。
「なぜ大里さんが狙われたのか…。疑問が深くなるばかりだ」
女性はこんな疑念も口にした。ハイ容疑者と大里さん夫婦との面識の有無がはっきりしていないことも、住民の不安に拍車をかけている。大里さん方で金品が物色された形跡は確認されておらず、犯行の動機につながる物証などは浮上していない。
大里さん方から徒歩圏内にある寮に住んでいたハイ容疑者は、近辺で日常的に農作業などを行っていた。作業中や行き帰りに、大里さん夫婦と知り合う機会はあったのか。県警は、ハイ容疑者の単独犯との見方を強めており、寮を家宅捜索するなどして事件の全容解明を目指している。(永井大輔、篠崎理)