沖縄を代表する観光地の一つでもある首里城が燃えたことについて、市民や首里城周辺の飲食店などからは今後の観光への影響を懸念する声も上がる。
火の粉が舞う南殿の近くで火災の様子を見つめていた近くの無職の男性(69)は「長い時間をかけて再建した県民の誇りだったのに。観光や経済に大きな影響が出るだろう。基地問題で政府と県が対立している中で再建はされるのだろうか」と肩を落とした。
首里城近くで化粧品販売会社を30年近く営む野原ゆき江さん(58)は「琉球王国のシンボルである正殿などが復元されたことで、国内や中国、台湾などの観光客がどっと増えた」と言う。例年11月は修学旅行や団体ツアー客の観光バスが会社前の道路を行き来するが「今後にぎわいがどうなるのか」と気をもんだ。
首里城前でソフトクリームなどを販売している「おっぱアイスじぇらーと首里城前店」は客の7割が観光客。オーナーの尾辻明央(あきひろ)さん(54)は「観光客はしばらくほとんど来ないのではないか。どこの店舗も商売は苦しくなるはず」と嘆き、近くの沖縄料理店の女性店員(25)も「首里城を観光した後に立ち寄る客も多かった。すでにキャンセルが数件入っている。団体客が来なくなるのでは」と不安そうに話した。
一方で、「沖縄を訪れる観光客は首里城だけが目当てではない」(沖縄市内のタクシー会社)といった冷静な声もある。りゅうぎん総合研究所の武田智夫調査研究部長は「首里城周辺に観光客が落とす経済効果がどうなるかはこれから検討しないといけない。ただ首里城は沖縄に来た時に回る施設の一つととらえれば、県内全体の観光客数が大きく減ることはないだろう」と指摘する。【杣谷健太、中里顕】