台風19号で被災した長野市北部では、壊れた家具を運んだり、災害ごみの上を歩いたりする中で、作業中のけがが増加している。長野市民病院によると、13~27日に家屋の片付けなどに絡んだけがで救急診療を受けたのは56人。最も多かったのは、くぎを踏み抜くなどの刺し傷だった。被災者や災害ボランティアの安全対策を考えた。【原奈摘】
店舗の入り口左手に並ぶのは、長靴と「くぎ踏み抜き」防止のインソール(中敷き)。作業用品を扱うケーヨーデイツー須坂インター店(長野県須坂市井上蛇沢)は、台風上陸翌日の13日から目立つ場所に移して配置している。
取り扱うインソールにはステンレス板が入っており、くぎやガラス片が靴底を貫通するのを防ぐ。同店を経営するケーヨー(千葉市)の担当者によると、靴底が金属板などで強化された安全靴兼長靴の売り上げは約4倍、より手軽なインソールは約6倍に伸びた。「けが予防に選んでもらえたら。ボランティアの方はできるだけ自分が住む地域で事前に購入を」と呼び掛ける。
被災地にほど近く、多くの救急患者を受け入れている長野市民病院によると、13~27日に、家屋の片付けなどに絡むけがをして救急診療を受けた人は被災者24人▽ボランティア11人▽仕事での作業者21人――だった。最も多かったけがは刺し傷で16人。打撲による傷11人、切り傷9人と続いた。同院救急センターでは、傷の手当てをした後に破傷風の予防接種をしている。
泥やごみの中のガラス片に気が付かず、手足に切り傷ができることも多い。ケーヨーでは厚手の革やゴムの手袋の在庫を増やしたが、想定より売れていないという。「軍手と併用すれば木片やガラスが刺さるのを防ぎやすい」と勧めている。
万が一けがをしたらどうすればいいのか。長野市民病院は「まず水でよく洗って。その後、血が出ていたらガーゼで押さえて医療機関へ」と言う。災害ボランティアは、事前に加入するボランティア保険で治療費は補償され、ごく軽いけがならばセンターで応急処置できる。県社会福祉協議会は「けがをしたらすぐに近くのスタッフへ連絡を」と呼び掛けている。【原奈摘】