あおり運転・宮崎文夫容疑者が元取引先にかけた「怪電話」の中身

あおり運転で逮捕された宮崎文夫容疑者(43)の次々と報じられる凶暴な振る舞いに加えて、また一つ、彼の常軌を逸した行動が明らかになった。「あおり男」が丑(うし)の刻にかけた、怪電話の中身とは……。
あるITコンサル会社の社長は、宮崎容疑者逮捕の報に誰よりも驚いたことだろう。
「逮捕の映像を見て、ようやく彼だとわかった。それまでは、同姓同名の別人だと思っていました」
この社長が知人の紹介を受け、宮崎容疑者と初めて会ったのは2013年。宮崎容疑者はかつて塾講師として英語を教えていた経験から、学習塾を開こうとし、HPの制作を依頼してきたのだった。
「当初、こちらが提示した数十万円の制作費に対し“そんなに払えない”と言うので、彼が払える金額まで値下げしました。最初に会ったとき、“リースでベンツを借りていて、その代金が何十万円にもなる”と話しており、金銭感覚が特殊な人だと思ったものです」
14年初頭にHPを公開して以降、運営も担った。
「運営費の請求は月5千円ほどです。それでも1年弱が経った頃に、“もう払えない”と言ってきたので、HPは閉鎖しました」
塾はその名も「宮崎学習研究所」。高校受験を視野に宮崎容疑者が個別指導で英語を教える予定だった。
HPでは、〈お子様の進路(扉)を共に考え、(中略)イメージできるよう支援していきます〉と謳った。
先の社長が言うには、
「HPからの問い合わせはありませんでした。塾に生徒はいたんでしょうか……」
その後、没交渉となっていた社長のもとに、再び宮崎容疑者から連絡があったのは昨年3月のこと。
「突然、深夜1時半頃に、電話がかかってきたのです。彼の番号を消していたためわからず、私が“誰?”と聞くと“ご無沙汰しています”とだけ言い、電話は切られてしまいました」
直後にまた着信があり、
「“宮崎です”と言われて、彼だとわかったのですが、“かけ直します”と言われ、電話はまた切られました」
すぐに社長が折り返すと、
「“いま(大阪市内の)桜川のロイヤルホストにいます。身の危険を感じているので迎えに来て欲しい”とか“管理会社の営業から狙われているんです。脅されてます”などと支離滅裂なことを言う。咳が止まらず、明らかに様子が変でした」
電話口からは、女性の声も聞こえたという。
「“誰かと一緒なんでしょう”と聞いても、激しく咳き込むばかりで電話は切れた。事件にでも巻き込まれたかと不安でしたが、彼からの連絡は二度とありませんでした」
意味不明の錯乱した物言い。社長が気味悪さに身震いしたこの電話から1年半後、男は全国に指名手配された。
元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏が、宮崎容疑者の今後を解説する。
「逮捕容疑の傷害罪だけでは罰金刑で済むかもしれません。あおり運転について暴行罪での立件も検討されているものの、ハードルが高い。ただ、単純横領罪は懲役刑しかありませんので、借りた車を返さずにいた横領罪と先の傷害罪をあわせて起訴し、実刑を求刑することは考えられます。執行猶予がつく可能性も否定できませんが」
当の宮崎容疑者本人は、被害者男性を殴打したのは“やり過ぎた”というものの、“危険な運転をしたつもりはない”などと供述しているという。
先の電話は、そんな男の知られざる一面であった。
「週刊新潮」2019年9月5日号 掲載