大物タレント独占で大阪一人勝ち? 新アリーナ構想におびえる周辺

大阪・関西万博が開催される令和7(2025)年までに、大阪府吹田市の万博記念公園内に2~3万人規模を収容可能な国内最大級のアリーナが誕生する。屋内での音楽ライブやスポーツの需要が高まる中、関西は首都圏に比べてアリーナの少なさが指摘されていた。ファンや興行関係者からは「関西での市場拡大の契機に」と歓迎の声が広がる。一方、大阪に隣接する兵庫県は「大阪に置いていかれる」との危機感を強めており、大阪に負けじと“兵庫アリーナ”の実現を模索している。(尾崎豪一)
待望の大型アリーナ
「万博公園に世界的規模のアリーナを」。大阪府の吉村洋文知事は9月17日の会見で壮大な構想を発表。10月から事業者の募集を始めた。これを受け、インターネット上では「大物アーティストの来阪に期待」「大阪城ホールとドームの中間規模という発想がすばらしい」などの意見であふれ返っている。
音楽興行主らでつくるコンサートプロモーターズ協会によると、平成21年に1255億円だったライブイベントの市場規模は30年に3448億円まで成長。需要が高まる中、問題になっているのが会場の不足だ。
特に関西は音楽とスポーツの興行がともに可能な1万人以上収容の屋内型施設が大阪城ホール(大阪市中央区、1万6千人)など5施設しかなく、同ホールの週末の予約は数年先まで埋まっているという。同ホール以上の施設は京セラドーム大阪(同市西区、5万5千人)のみ。5千人以上に範囲を広げると10施設以上あるが、騒音対策で音楽興行が行われていない施設もある。首都圏のさいたまスーパーアリーナ(さいたま市、3万7千人)や横浜アリーナ(横浜市、1万7千人)に匹敵する施設誕生への期待は高まっている。
代替としての需要
「大阪に大型アリーナができると、神戸に行く必要がなくなる」。10月下旬にワールド記念ホール(神戸市中央区、8千人)で開催されたライブイベントに訪れたファンからは、今後の神戸での需要に厳しい声が聞かれた。
兵庫県を代表する同ホールは、約10年前から週末の興行が増加。年35~40公演開催されており、ある在阪の興行主は「大阪が会場不足のため神戸で興行するという動きが増えた結果」と説明する。この日のライブも前回は大阪城ホールで開催していた。ただ、ワールド記念ホールは収容人数の少なさから大型公演ができないとの不満の声もある。
このため、近畿大短期大学部の鈴木善充准教授(公共経済学)は「同ホールは規模も知名度も大阪城ホールより低いので、大型の新アリーナができれば代替としての需要が移るのでは」と指摘する。
兵庫県の井戸敏三知事も危機感を隠さない。訪日外国人客で大阪や京都に水をあけられる兵庫県にとって、成長産業の取り込みは重要課題。井戸知事は大阪のアリーナ発表直後の会見で「規模で負けることになりかねない。新アリーナは検討しないといけない課題だ」と力を込めた。
兵庫アリーナ実現は?
アリーナに意欲的な井戸知事は「候補地のあてがない」としながらも、可能性のある場所として西宮、明石、神戸の3市を挙げた。
ただ、西宮市は大阪中心部から阪神、阪急、JRがそれぞれ接続するアクセスの良さが魅力だが、駅周辺が大規模な再開発でほとんど商業施設に変わった。明石市は、利便性の高いJR明石駅近くの県立明石公園が候補になるが、明石城跡など文化財保護との兼ね合いの問題がある。
神戸市は、ワールド記念ホールのある人工島・ポートアイランドが神戸の中心からのアクセスが良く、土地の確保も比較的容易だが、アクセスがほぼポートライナーに集約されるため輸送量に不安が残る。
いずれも決め手に欠く状況だが、鈴木准教授は「関西で公演となれば大阪に集中する。それでも兵庫に大型のアリーナができれば、首都圏のさいたまと横浜の関係のように、大阪に次ぐ施設として存在感を発揮できるかもしれない」と魅力を認める。大阪・関西万博を契機に関西の「ハコ不足」が解消に向かうのではと注目が集まっている。