【紅葉】長さ日本一「比叡山・坂本ケーブル」の絶景やいかに 「二度びっくり」誰も降りない秘境駅もすごかった……!【写真42枚】

京都府と滋賀県の県境にある比叡山には、世界文化遺産の延暦寺があり、この季節は「比叡山もみじ祭り」(2019年は11月2日~11月24日まで)を中心に紅葉見物の名所として知られています。しかし鉄道好き、乗りもの好きとしては「こちら」も忘れてはなりません。今回は比叡山延暦寺に向かう長さ日本一のケーブルカー「坂本ケーブル」に乗ってきました。

●ふもとのケーブル坂本駅からいざ出発!

比叡山の麓にある滋賀県大津市坂本から比叡山へと登る「坂本ケーブル」。比叡山鉄道比叡山鉄道線といい、比叡山鉄道が運営しています。「ケーブル坂本駅」と「ケーブル延暦寺駅」を結ぶ路線の全長は2025メートルで、ケーブルカーとして日本最長。途中に2つの駅「ほうらい丘駅」「もたて山駅」があります。

始発駅となる「ケーブル坂本駅」がまずすごい。駅舎そのものが国の登録有形文化財に指定されており、いきなりレトロな雰囲気たっぷり。坂本ケーブルに確認したところ、この駅舎は1927年(昭和2年)の開業当時からずっと現役で活躍しているのだとか。「外壁を塗り直したり、窓をサッシに変えたりはしていますが、骨格は開業当時のままですね」とのこと。

駅舎の中もレトロ。時間がゆっくり流れているようです。出発5分前に改札が始まるので、それまで待合室でのんびりしましょう。近くに自動販売機やトイレはありますが、コンビニや売店まではありません。

ケーブルカーが降りてきました! 山からのお客さんが全部降りるのを待って、それから改札です。

なお坂本ケーブルは通常、ケーブル坂本駅を出ると終点のケーブル延暦寺駅まで「ノンストップ」で行ってしまいます。ほとんどの乗客の目的地が延暦寺だからですね。ですので途中の駅で降りる場合には、改札時に係員さんへ途中駅で降りる旨を伝えておく必要があります。

「ほうらい丘駅で降りたいんですけど……」(恐る恐る筆者)

「分っかりました!(ニコニコ)」(係員)

(ホッ)

では、出発です!

山の緑に映える赤い車両には、「福」と「縁」という名前が付いています。最初に乗ったのは、福号。今回は車内の様子も撮りたくて平日の11時発車の便に乗ったのですが、座席は全部埋まっていて、立ち乗りの人もかなりいたくらいです。

ケーブル坂本駅を出発するとすぐに橋があります。その手前でなぜか停止。これは下りのケーブルカーが「もたて山駅」に停車したため。下り車両がもたて山駅に止まるのに合わせて、上りはここで停止するのですね。

ケーブルカーが動き出すと同時に、運転士さんから「次のほうらい丘駅で停車します」とアナウンス。

(あ、私だ)。

他のお客さんから「え……(マジ?) こんなところで……?」などと戸惑う声が上がりました。ですよねー、びっくりしますよねー、すみません……。

●戦国時代の悲劇を伝える、ほうらい丘駅

1つ目の途中下車駅「ほうらい丘」は山の中にある駅。あるのは木造の小さなホームだけ。降りたのは私一人だけです。ここには「霊窟」がります。駅に隣接しています。

中に入ると……。石仏がいっぱい。さらに、霊窟の外にも石仏がずらり。

この石仏は、大正末期のケーブルカー敷設工事のときに見つかったもの。1571年(元亀2年)、織田信長による比叡山焼き討ちの犠牲者を弔うために地元の人たちが作ったものだと伝わっています。

しっかりと手を合わせて、犠牲者の冥福を祈りました。

●続いて「もたて山駅」へ ……そういえば、どうやってケーブルカーに乗せてもらうの?

次のケーブルカーでもう1つの途中下車駅「もたて山」に向かいましょう!

前述しましたが、坂本ケーブルは基本的にケーブル坂本駅からケーブル延暦寺駅までノンストップ運行。利用客がいなければ途中駅には停車しません。そんな途中駅で「ケーブルカーに停まってほしい」場合は、ホームにあるインターフォンで「乗りまーす」と係員に連絡します。

「これ壊れてたら、どうしよう……」何て一瞬思いましたが、無事つながりました。

「ほうらい丘駅にいるんですが、上りのケーブルに乗せてください。そのあと、次のもたて山駅でも降りたいです」(筆者)

「分っかりました!(ニコニコ)」(係員)

気持ちよいお返事。これで安心です。

上りケーブルカーに乗ってしばらくすると、下りのケーブルカーとすれ違う「ターンアウト」という場所に差し掛かります。ここがちょうど路線の中間地点です。

かなり登ってきました。車窓から琵琶湖の景色が一望できます。うわぁぁぁ絶景。車内のお客さんたちも、スマホでバシャバシャ記念撮影です。

「もたて山駅に停車します」(運転士さん)

(え……マジ? こんなところで……? ざわ)(他のお客さん)

すみません。びっくりさせてごめんなさい……停まるんです……。

●もたて山駅から紀貫之のお墓へ ところが……

「もたて山駅」には、ちょっとした屋根やベンチがあります。ほうらい丘駅に比べると設備がしっかりしていました。

もともともたて山駅は、近くにあったキャンプ場へのアクセス駅として開業した駅だったので、多分そのせいでしょう。ハイキング道も整備されています。当日は私一人ではなく、ハイキング客の方も一緒に降りていました。

もたて山駅から15分ほど歩くと「土佐日記」の作者・紀貫之のお墓があります。よし行くぞ……と思ったものの、ハイキング道といえば聞こえは少しいいですが、思いっきり「山道」です。最低でもスニーカーが必要で、できれば登山靴の方がいいくらいハードでした。皆さんなめたらあきまへん、気を付けましょう。

紀貫之はもたて山から見る琵琶湖の景色が好きだったので、ここにお墓が作られたのだそうです。平安時代の人たちもこんな厳しい山道を登ったんですよね。ケーブルカーもスニーカーも登山靴もない時代に、あの平安装束で? 昔の人、すごすぎますよね。

もちろん現代は道標がちゃんとあるので道に迷う心配はありませんが、落ちている枝などで足を取られたりもするので注意して歩かなければいけません。歩いていると遠くに延暦寺の鐘の音が聞こえてきて、何だかこう、ちょっと心細い雰囲気の中、途中の目印だという「見晴らし台」を探します。

あった。あ、あれ……?

見晴らし台で期待した景色は見られませんでしたが、気を取り直して歩き続けてようやく「紀貫之のお墓」に着きました。

……お墓は何と倒木の下。ええ……!

な、何で。これは一体……?

年2回、紀貫之のお墓参りに来られるという高知県南国市の国府史跡保存会に確かめたところ、2019年8月に墓参りしたときには木は倒れていなかったそうです。2019年10月に来た大きな台風の影響と思われます。今回は念のため、比叡山の管理をしている延暦寺にこの状態を報告しておきました。次の墓参りの時期までにきれいになっていればいいのですが……それにしても、自然はすごい。

さて、再び15分ほどの時間をかけて駅に戻り、おなじみのインターフォンで「もたて山駅から乗ります」と伝えます。

もたて山駅から終点のケーブル延暦寺駅には1~2分で到着です。というか、上を見ればもたて山駅からケーブル延暦寺駅の駅舎が少ちょっと見えるくらい。そんな距離感です。

●ケーブル延暦寺駅で、琵琶湖とケーブルカーの絶景を楽しむ

「ケーブル延暦寺駅」も、ケーブル坂本駅と同様に国の登録有形文化財です。近畿の駅百選にも選ばれています。

この駅のおすすめは、2階の展望台。琵琶湖が一望できちゃいます。

いやー、いいですね「坂本ケーブル」。乗って感じた疑問点など、比叡山鉄道 坂本ケーブル運輸部担当の方に話を聞きました。

── ほうらい丘駅ともたて山駅で「途中下車」するお客さんはどれくらいいるのですか?

坂本ケーブル 鉄道ファンの方が降りられますよ。月10人くらいですね。

── 鉄道ファン! やっぱりそうなんですね。

坂本ケーブル どちらかというと、ほうらい丘駅で降りる人の方が少ないです。道がないので、駅から他に移動できず、霊窟しかないことが理由でしょうね。

── ほうらい丘駅へ行くにはケーブルカーに乗るしかないんですね。霊窟のお掃除などはどなたがされているんでしょう?

坂本ケーブル はい。お掃除は地元の有志の方らが年1回程度してくれます。また、弊社でも毎年8月23日前後に霊窟内で地蔵盆供を行っています。

── もたて山駅はハイキングコースともつながっていますね。

坂本ケーブル はい、ハイキング客の方が利用されることも多いですね。あと、毎年4月と8月に高知県南国市から紀貫之のお墓へ墓参団(ぼさんだん)の方がいらっしゃいます。

── そうだ。途中駅にあるインターフォンなのですが。あれが故障していたら怖い……と思ってしまったんですが……。

坂本ケーブル 重要な電気設備ですから、毎月検査しているのでご安心を! 家庭用のインターフォンを使っているのですが、今まで故障したことはありません。

── そうですよね。怖がってしまってごめんなさい。次からは安心して呼ばせていただきます。

坂本ケーブルがつなぐ比叡山とふもとの大津市坂本は、2020年NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公明智光秀ゆかりの地でもあります。

琵琶湖と比叡山の自然、歴史を感じられて秘境駅まである「坂本ケーブル」、紅葉の季節、ぜひ乗りに行ってみてはいかがでしょう。2019年の紅葉は11月11日あたりからが見頃だそうです。

(鶴原早恵子)