犬猫にマイクロチップ埋め込み義務化 懸念される健康被害

犬・猫にマイクロチップの埋め込みを義務化する──そう定めた改正動物愛護管理法が可決され、愛犬・愛猫家に衝撃を与えている。
同法は2022年6月までに施行され、業者が新たに販売する子犬・子猫の体内に、15桁の番号が記録されたチップを埋め込むこと、飼い主の氏名・連絡先など個人情報の登録が義務付けられる。
主導した自民党どうぶつ愛護議員連盟は「災害時や迷子時に飼い主への返還が促進される。所有者の管理責任が明確化されることで、遺棄などの抑止に繋がる」(議連事務局)と説明するが、懸念されているのが「健康被害」だ。
装着されるマイクロチップは、直径2ミリ、長さ10ミリ程度で、獣医師が注射器で犬や猫の首もとに入れる。日本獣医師会は〈障害はほとんどない〉と説明するが、動物愛護団体のアニマルライツセンター理事で落語家の立川平林氏はこう語る。
「2016年に義務化されたイギリスの小動物獣医師会が『まれにチップに反応して炎症を起こすことがある』と報告しています。アメリカの獣医師会は、非常にリスクは低いものの、チップによって『がん』を発症する可能性にまで言及している。炎症や発がんといった症状が出なくても、チップの違和感は多大なストレスになると予想されます。
チップによって迷子が捜しやすくなると言いますが、義務化が進むヨーロッパなどの海外では、飼育できなくなった飼い主が証拠隠滅のためにナイフでチップを抉り出してから遺棄するという残虐な事件も起きている。そうした事態をどこまで想定できているかは疑問です」
犬猫だけでなく、飼い主も“実害”を受ける可能性がある。動物評論家の三上昇氏が指摘する。
「チップの装着費用が犬猫の販売価格に上乗せされ、飼い主となる購入者の負担が増すことが考えられます。チップ装着の費用は数千円~1万円程度とされていますが、獣医治療は自由診療のため、獣医師が少ない地域では、より高額な価格設定にする動物病院が出てくることもあり得ます」
改正法には、チップ装着や情報登録違反に関する罰則規定が無いことも問題視されている。
「チップの埋め込みを行なわない“闇業者”が出現する可能性もある。チップ装着費用を惜しんだペットショップが、『装着した』と偽って販売する事態も考えられます。
登録した個人情報の管理体制が徹底されるかも不透明です。万が一、流出する事態が起これば、高級ペットを飼っている飼い主を中心に、悪質な犯罪被害が起こりかねません」(同前)
ペットにも飼い主にも、最善の制度運用となることを願いたい。
※週刊ポスト2019年9月13日号