給食詰まらせ死亡 事故から3年 母「苦しかったのに誰も助けてくれなかった。郁香の声を安全対策に」

大分県別府市の県立南石垣支援学校で、高等部3年の林郁香(ふみか)さん(当時17歳)が、給食をのどに詰まらせて死亡した事故から15日で3年になる。林さんの母、香織さん(49)が4日、同支援学校の事故防止研修で、教職員約80人に向けて講演した。【樋口岳大】
重度の知的障害があった林さんは、2016年9月15日、給食中にのどを詰まらせて意識を失い、17日後に死亡した。事故後に設置された第三者委員会がまとめた報告書では、教職員が林さんを給食中に1人にしたことや、のどを詰まらせて倒れた後に心肺蘇生をしなかったことなどが「大きな問題」と指摘された。
母の香織さんは講演で、生前の林さんの写真を見せながら、「もう二度とあのキラキラした笑顔を見せてくれることはない」と訴えた。
第三者委は「見守っていれば、かき込む食べ方を止められた可能性が高く、(のどを詰まらせた後も)窒息を疑い、口の中の食べ物をかき出すなどの素早い対応を取ることができた」と学校側の対応を問題視した。
香織さんは「皆さんにとって事故はもうかなり前のことなのかもしれない。でも、私は毎日、『郁香がいたころに戻りたい』と思いながら過ごしている」と胸の内を明かした。
報告書では、林さんが倒れた直後に駆け付けた養護教諭らが、出血に動揺するなどして胸骨圧迫などの心肺蘇生をしなかったとも指摘していた。香織さんは「正しい救命措置をしていれば、救命の可能性があったのではないか」と無念をにじませた。
香織さんは「報告書は『苦しかったのに誰も助けてくれなかった。どうして』という郁香の声だ」と語り、「郁香の声を今後の学校の安全対策につなげてほしい」と訴えた。
講演を聴いた友成洋校長は「私たちにできることは、この学校で、特別支援学校で、二度と事故を起こさないことだ。安全、安心な学校になるよう教職員1人1人の危機管理意識を高めたい」と語った。